お弁当箱を開いたとき、美波ちゃんと奈都がトイレに出ていった。
「ね、結局どーなってんのっ?」
「へ?」
「槇原くんと!
付き合ってるわけじゃないの?」
ギク。
痛いとこつかないでよ〜、ほのちゃん…
「付き合っては…ないよ…」
うん…
私は好きって沢山伝えてるつもりだけど…
樹世にはいっつも流されちゃうんだ。
「告白、しないの?」
俯く私に心配そうに言う。
「告白…」
告白、かぁ…
改まって好きって言うのも、なんか恥ずかしいなぁ…
それに…
「樹世って、誰が好きなんだろうね…」
「えぇっ!?
來々と槇原くん、両片想い状態なのかと思ってた…」
「リョウカタオモイ…?」
それは…なに?
初めて聞いた。
「だから、お互い好きで両想いなのに、自分は片想いなんだーって思ってるってこと!」
へぇ〜…
両片想いって言うんだ…
「って、それじゃぁ樹世が私のこと好きってなっちゃうじゃ〜んっ…」
「だから、そうだと思ってたよ…」
「えぇ〜?」
もう、そんなこと言われたら期待しちゃうよ…
でも実際、樹世に好きな人聞いたことないんだよね…
だってそこで私って言われなかったら、きっと泣いちゃうもん。
好きって伝えるのと同じくらい怖い。
私が樹世に好きって言えるのは、ほんとに好きって思いもあるけど、ある意味では“幼なじみとして”受け取ってくれるからって言うのもあるかもしれない…
「告白…しようかな…」
「お、頑張れっ」
「うんっ」
樹世が誰を好きなのか、誰と付き合うか、分からない。
だから、少しでもチャンスがあるなら…
無駄にはしたくない。
けどその前に、確認しなきゃ行けないことがある。
「あ、おかえりー
私もう食べ終わっちゃったよー?」
教室に入ってきた奈都と美波ちゃんに向かってほのちゃんが言う。
「やば、あと10分、急がなきゃ!」
黙々とお昼ご飯を食べる2人。
「ねぇ、」
声をかけると、2人同時に私を見た。
…息ぴったりっ。
「あ、奈都。」
最初から奈都って読んであげればよかったかな…
「今日、バレー部休みだよね?
一緒に帰らない?」
「あー、うん、いいよ。
あれ、でも吹部部活じゃ…」
「今日はたまたまお休み。」
「そっか。
なら、いいよー」
顧問の音楽の先生がお休みだからね。
個人練しててもいいんだけど、今日は…
話したいことがあるから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。