第9話
取引
俺が目を瞑った瞬間、カランという音がして目を開けた。
床に落ちた注射器。
驚愕を隠せない英。
呼吸を整える綺羅良。
―そして―
英を抑える鹿沼
俺は言われるままに綺羅良の拘束具を外した。
暴れる英を微動だにせず後ろから固める鹿沼。
とりあえず綺羅良に制服のジャケットを羽織らせて、その場から逃げた。
逃げるにも、俺や綺羅良の家は英の支配下にある。
安全とは言い難い。
藤澤の家なら安全だったので、少しの間世話になる事にした。
とりあえず風呂場を貸してもらった綺羅良は全身が敏感で、喘ぎ声を発してしまう。
どうすれば…
どこからともなく現れ、英を捕まえてくれたと思ったら、またどこからともなく現れた。
綺羅良がタオルを巻いて出てきた。
藤澤とは気まずそうに目を合わせない。
綺羅良に事情を説明すると、不可解そうな顔で頷いた。
ピンポーン....ピンポーン....
ガチャッ
藤澤が部屋から1歩出た瞬間に家の扉が開いた。
英を先頭に、執事やメイドが入り込んでくる。
意味が分からない。
英が廊下をズンズン進んでくる。
もうどうにでもなれという一心で手を握ると、見覚えのない景色が広がっていた。
鹿沼にしては珍しいバカにしたような笑みを浮かべた。
一方、藤澤の家では
英はハンカチを取り出し、藤澤の口に突っ込んだ。
数時間後...
綺羅良が改造された部屋で拘束されていた藤澤は目を覚ます。
藤澤の猿轡を外し、ポケットから藤澤のスマホを取り出す。
英は藤澤のブラのホックに手をかける。
今すぐにでもテレビ電話をかけられる画面を見せつける。
リズムよく音が流れて、応答待ちの画面へと変わる。
英は藤澤をバックに自撮りのポーズを取る。
藤澤は目を背けた。
画面越しに綺羅良が震える。
震え声で訴えかける。
藤澤のブラを外す。
藤澤のショーツが脱がされる。
綺羅良を見放す訳じゃない。
でも藤澤は巻き込みたくない。今更手遅れだが。これ以上は...。
そう言うと、最初からそこには居なかったかのように姿を消し、画面の向こうに現れた。
高校生関係ないだろと突っ込みたくなったところで、英が倒れて、カメラアングルが変わった。
得意気にそう言って人差し指を掲げると、拘束具が解け、藤澤はその場に着地した。
藤澤を光が包み込み、藤澤の制服に身を包んだ。
藤澤が黙って手を取ると、俺たちの目の前に現れた。