第5話
救世主⇔ご主人様
綺羅良が振り下ろした手には包丁は無い。
もちろん俺が取ったからだ。
ガチャン
藤澤は逃げるように帰っていった。
こいつはカッとなるとやっちゃうタイプか。
とりあえず包丁を台所に直しに行った。
どいつもこいつもめんどくさい。
腹に鈍痛が走った。
その場にへたり込んでしまう。
重い腹パンだ。本当に女子なのか。
呼吸すら苦しい。
もう一発。
逆に目が覚める。
押し倒され、腹部に綺羅良が座り込んだ。
首を締められ、逃れようと必死に綺羅良の腕を掴んでどけようとしたり、足をバタつかせたりしてみるが、綺羅良は微動だにしない。
してきた。
音が小さくなっていく。
綺羅良の不敵な笑みも遠のいて、そのままストンと意識が消えた。
目が覚めたのは、綺羅良の笑い声を聞いてからだった。
数時間たっていたらしく、外は真っ暗だ。
ここは綺羅良の部屋か。
俺は手足を縛られてうつ伏せに寝かされていた。
目の前には椅子に拘束され、口にガムテープを貼られた藤澤がいた。
藤澤の後ろでニコニコしながら握りしめたカッターをカチカチと弄んでいるのは綺羅良だ。
藤澤も勢いよく頷いていた。
早口になってしまう。
藤澤はまた頷く。
藤澤はガタガタと椅子を揺らして必死に意思を示そうとする。
綺羅良は藤澤の手の甲にカッターで切り傷をつけた。
藤澤は暴れるのをやめ、手の甲から滲み出る血を眺めた。
きゃははっと笑う綺羅良。
藤澤は助からないのか…?
そう悩んでいた時
ピンポーン
インターホンが鳴った。
綺羅良が部屋を出て玄関へ向かった。
しばらくして扉の開く音がした。
綺羅良の叫び声がして、不審者かと思った。
ドアを開けたのは綺羅良だが、強引に入ってきたのだろうか。
綺羅良を押しのけて進もうとしているのだろうか。
俺に用が...?
だんだん足音と声が近づいてくる
英は俺のロープを解こうと近づいてきた。
その後ろで綺羅良がカッターを振りかぶった。
英は素早く半回転し、綺羅良の手を手の甲で弾くと、カッターは綺羅良の手から抜け、床に刺さった。
綺羅良は自分の荷物を持って、家から出て行った。
その瞬間、頭を踏まれた。
英は俺の縄を解き、帰っていった。
俺は藤澤の拘束を解いた。
藤澤も帰って行き、やっと1人になった。とりあえず晩御飯を食べることにした。