第3話
アイドル⇔いじめられっ子
風紀委員とかいうめんどくさい役割を任されてしまった。
そんな高校生活最初の休み時間。
運良く窓際だったので窓の外を眺めていた。
電線に雀が留まっている。
10羽くらい固まって留まっている十数センチ横にたった1羽留まっていた。
俺みたいだなぁ...。
急に耳元で名前を叫ばれて、驚いて振り向いた。
クラス中がこっちを見ている。
俺は手を引かれるままに廊下を歩いた。
休み時間が始まって約2分。残り約8分。
ぼーっとしていたかったな。
なんかクラスのアイドル的な人も大した事ないな。
こんなのの何処がいいんだろう。
手を引かれるままに歩き続けた。
屋上の扉の前の踊り場に着いた。
ここは廊下の隅の階段を登らなければ着かない。
屋上には何も無い。
つまり誰も来ない。
綺羅良は屋上の扉を開けた。
屋上の囲いは1mあるかないかくらいだった。
ここは5階なのに不注意な囲いだ。
彼女は過呼吸になっていた。
こいつの言っていることがまるで理解できない。
整理も出来ずに単調な疑問で返すしかなかった。
今日知りあったやつがわざわざ俺の前で死のうなんて意味が分からない。
簡単な理由だった。
でも理解し難い理由だった。
それだけで死のうなんて勝手だなと思った。
彼女は屋上の端に向かって走り出した。
俺も少し遅れて走り出した。
彼女の腕を掴んだ。
たまにいる精神的な病の子なのかもしれない。
過呼吸でもう喋れなくなっている。
死にたい死にたいって....また勝手に。
お姫様抱っことかいう高度なテクニックは持ち合わせていないので、おぶろうと思った。
途方に暮れて頭を掻いた。
まだ約5分。
なんか泣き出してしまった。
めんどくさいけど放置もできない。
ゆっくり頷いた。
半ばやけくそだ。
とりあえず時差を付けて教室に戻る事にした。
教室に入った瞬間見られたけど、彼女がいなかったからか、そこまで見られなかった。
彼女が入ってきたら少しざわついた。
切り替えが早いなアイツ。
腑に落ちなそうな笑顔で返す。
何考えてるか分からない。
授業は終わった。高校生にもなって自己紹介カードを書かされた。
あとはホームルームか。
彼女は泣きそうな目でこちらを見つめてくる。
俺はどう返していいか分からず、そっぽを向きながら、左手でグッドサインを出した。
彼女は真っ先に教室を飛び出した。
下駄箱とは逆方向だったため、怪しまれていたが、後を追う人はいなかった。
俺も屋上に行く事にした。
とりあえず大体いなくなるまでのんびり帰りの準備をした。
残り数人で先生と喋っている程度になったので、行く事にした。
遅すぎて飛び降りてたらどうしよう。
少し足を早めた。
なんで死にたがっていたのか聞くか。
まあ俺は一人暮らしだが、泊めるのも抵抗がある。
しかしこのまま家に返して、明日またいじめられるのも可哀想だ。
こうして俺と綺羅良の同居が始まった。