第4話
修羅場は勘弁
今日はとりあえず親に連絡をするらしい。
怒られたりしないかと心配したが、ダメ親はダメ親でも何もしないだけで、暴力や暴言はほぼ無いらしい。
そういえばあの部屋は物置代わりに使っていたな。まだ午前中だし、帰ってから片付けるか。
Σバンッ!!
綺羅良が半泣きになっている。
なんか嫌な予感がする。
藤澤が俺を見る目が鋭くなっていく。
藤澤が綺羅良の手をぎゅっと握る。
手の力が強すぎて綺羅良がビビっているのに藤澤は気づいていない。
それどころか、俺の事を怖がっていると思っているんだろうな。
でも藤澤はいじめるタイプではないと思う。
ただの善意だろうな。
綺羅良が藤澤を手を振りほどいて逃げ出した。
Σバタンッ!
笑顔で威圧して来る。
何もしてない。むしろあっちが俺に迷惑をかけているだけなのに。
ズカズカとこちらへ向かって来る。
ガチャ...
こうして俺は無事家路に着いた。
はずだった
目の前の信号が点滅した。
すっと立ち止まり、藤澤の方へ振り返る。
すごく怒っている。
正義感が強いのも困りものだ。
こいつ何も知らないくせに...。
こっちはこっちで困ってるってのに。
信号も青に変わり、再び前を向いて歩き出した。
こういうめんどくさいいい子ちゃんは苦手だ。
帰ってくれないと尾野が来てしまう。
そうこう言い合って、結局片付けを手伝われる事になった。
それからしばらく片付けをした。
1時間半くらい。
彼女は親が仕事中で、家に誰も居ないらしい。
もうすぐ1時。そろそろご飯を食べたい。
急に真剣な顔つきになって俺に問いかける。
別に何をって言ってもな。
ニコニコと威圧して来る。
ならば
ニコニコと押し返す。
そのまままた言い合いになって、気づけば3時。
ピンポーン
ガチャ
綺羅良は靴を脱ぎ捨てて藤澤の方へ向かう。
綺羅良が部屋から出て行った。
綺羅良が取り乱すと何が起こるか分からない。
バンッ!!
綺羅良が藤澤に包丁を向ける。
マズい事になった。
じりじりと藤澤に近づく。
藤澤は尻もちを付いて動けない。
涙目でせがむ藤澤。
うっすら微笑みながら近づく綺羅良。
あと30cm
綺羅良が包丁を振り上げた。