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第5話

Happy End
295
2019/07/23 04:51
バタバタバタ
風が吹きスカートがはためく。
もう夕方だというのに、ジメジメとした気温で髪がベタつく。
私は屋上きていた。
柵の向こう側から見える景色は、今まで見てきた景色より迫力がある。
主人公
主人公
やっと......やっと、ここまで来たのね。
今日こそは誰もいない。私1人だけ。
もう、誰にも邪魔されない.........。邪魔してはくれない。
主人公
主人公
ふぅー。
息を全て吐き出すと、私はカーディガンを脱ぐ。柵にかけてから三つ編みをほどく。
そこまできて手が止まる。
気配を感じたのだ。
恐る恐る屋上を振り返ると一人の女の子が立っていた。
その子はこちらを無感情の瞳でじっと見ている。
主人公
主人公
な、なに?
屋上の柵の奥に立ったまま声をかけた。
緊張して思わず声が裏返る。そんな私の感情を知っているのか、知らないのか女の子は何も話さない。
もう、いいや。どうでも。別に見られてたって構わない。
そう思い前を向く。
たったの1歩、地面のない空へ足を踏み出そうとしたとき、感情の無い声が私の耳に届いた。
???
???
ねえ、やめなよ。
主人公
主人公
っ.......!
思わず息を飲んだ。驚き女の子を振り返ると相変わらず無表情でいた。
主人公
主人公
な、なんで、その言葉.........。
ねえ、やめなよ。
この言葉ずっと私が使ってきた言葉だ。どうしてこの女の子が.........。
???
???
ねえ、やめなよ。
違う.....ねえ、やめてよ。
息をするのも忘れた。周りの時間が一瞬止まった。
聞きたいことが沢山あるのに何を聞けばいいか分からない。いや、声が出なかった。
目を大きく見開き女の子を見た。
女の子はずっと無表情。何も言ってないかのような顔をしている。でも確かに女の子の口は動いていた。
???
???
頑張ってね。
そういうと消え去っていった。
ほんの数分の出来事であった。それでも私には何時間にも感じた。
主人公
主人公
ふー。
息ができた。深く息を吐くと、もう一度屋上から見える景色を見た。
そして少し考えると、カーディガンを着て三つ編みを結ぶ。
背の低い私はその場から立ち去っていった。

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