卒業するまでは、ね……
父さん…あぁ、こういうと怒られるんだった。
お父様は、娘の私を昔から溺愛してて、日々、『私に悪い虫がついたらどうしよう』なんて言ってる。
だから、早くに紹介するつもりなんだろうけど、私はこんな婚約絶対にするつもりはないから。
だって、好きな人いるし…。
お父様には、好きな人がいるって言えないから、今から、紹介される婚約者を私が絶対に気に入ると思ってる。
物心ついた頃から、家はなんか違うと思っていた。
それが、大きくなる度に分かっていった。
私は世間一般にいうところのお嬢様と呼ばれる立場らしい。お嬢様としては、少し変わっているって自分でも思っている。
正直、家の地位なんて弟が跡取りなんだから私には、関係ないし、どうでも良いぐらい。
自分の部屋も漫画とかみたいな大きい部屋じゃなくて、八畳の部屋だし。
執事もいらないっていつも言ってる。
そんな私だから、お父様は、早く安心したいんだろうけど、自分のために娘を犠牲にするのもどうかと思うけど。
ついに、顔合わせが始まってしまう。
エレベーターで、最上階に向かううちに思い描いていた普通の恋愛は、諦めよう。
今から、会う婚約者のことを好きになろうと思っていた。
性格の不一致やナルシストは、困るけど優しければ良い。愛が生まれればなんでも良いと思っていた。
―――顔合わせ―――
始まった顔合わせ。
私は、今、目の前にいる男に驚愕していた。
この男が私の婚約者なんだけど、最初に思ったことそれは……
帰って良いですか?
だった。
なぜならば、この男はうちの学校では、知らない人はいない人気者中の人気者・星河悠真だったからだ。
さ、最悪――
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。