第11話

眠れない夜
110
2019/04/06 15:14
悠真の爆弾発言の後、私は悠真に言葉の意味を一応確認した。
桜ノ宮瑠璃
ね…ねえ、悠真
『一緒に寝ないか?』ってどういう意味
をこめて言ったの?
星河悠真
そのまんまだけど。
俺ら夫婦になるんなら今のうちから別々の
ベッドじゃなくて一緒のベッドで寝た方がいいんじゃないかと思っただけだし。
桜ノ宮瑠璃
そ、そうだよね。
それ以外の意味なんてないよね?
星河悠真
は?
なに、そんなに焦ってんの?
もしかして、襲ってほしいとか?
桜ノ宮瑠璃
え…………
あ…いや、そうことじゃなくて……
星河悠真
ばーか
冗談だよ。
星河悠真
別に一緒に寝たくないならそれでいいし。
強制する気なんてないから。
桜ノ宮瑠璃
…………よ
星河悠真
え?
桜ノ宮瑠璃
いいよ。
一緒に寝よう。
私は、悠真に対する気持ちの答えを確かめたくて、ついつい悠真と一緒のベッドで寝ることに了承してしまった。


そして、言った後で気がつくという……なんという、馬鹿げたやつなんだろう。私って本当に後先考えずに行動しちゃうよな。こういうところには、自覚はあるけど自分が鈍感かどうかなんて分からないしー。
まあ、いいや。
…………あれ?そういえば、ベッドって私と悠真、どっちのを使うの?どちらもシングルベッドだけど…
桜ノ宮瑠璃
ね…ねえ、悠真。
ベッドって…
星河悠真
ああ
ベッドならダブルベッドがあるから平気
桜ノ宮瑠璃
え?
そんなのどこにも…
と、そこまで言って気づいた。
私がここに越してきてから一度も入ったことがない部屋があった。
もしかしてそこに………ダ、ダブルベッドがある?
桜ノ宮瑠璃
もしかして、あの部屋に?
星河悠真
そうだけど?
それが?
『あの部屋』とは、悠真が一番最初に絶対にこの部屋には入るな!と、勢いよく言ってきた部屋。
そっか……あの部屋か
初めて入れるかもしれないんだからこのチャンスは逃せないわ。


でも、どうして悠真は提案者なのに浮かない顔をしているのかしら?
桜ノ宮瑠璃
ねえ、悠真
どうしてそんなに浮かない顔をしているの?
星河悠真
あーそれは……その……
珍しい。
あの、いつも上から目線的な悠真が口ごもってる。
え?なに?
あの悠真をこんな顔にする部屋って一体……
星河悠真
まあ、見てみたら分かるから。
行くか?
桜ノ宮瑠璃
うん
自分の目で確かめてみて、なんかアレだったら
お父様に文句を言おう。
どうせ、用意したのお父様と悠真のお父さんだと思うし。
「例の部屋の前」
星河悠真
ここ……
嫌だったら、本当にやめていいから。
そう言って、悠真が扉を開けた。
そして、部屋を見た私は……
言葉を失った。
桜ノ宮瑠璃
本当にここ……なの?
と、確かめてしまった。
星河悠真
そう
星河悠真
………………
文句なら、親父たちに言って。
悠真は『あくまでも俺はやってないから。責任は親父たちにどうぞ。』

と、お父様たちに責任転換をした。
いや、でも悠真だって私がここに来る前に一回ここに下見しに来てるんだからどうにかできたんじゃないの。
まあ、悠真にここまで言わせるこの部屋もすごいけど。
私は、部屋についつい感心してしまった。

そしてその問題の部屋の内装が……
部屋の真ん中に物語のお姫様が寝ているようなベッドがおかれており、天井のライトもシャンデリアみたいなものだった。
桜ノ宮瑠璃
なにこれ……
星河悠真
だから、見せたくなかったんだよ。
桜ノ宮瑠璃
でも、悠真が言ったんじゃない。
『見た方がいい』って。
星河悠真
そうだけど…
桜ノ宮瑠璃
あと、私言ったじゃない。
『一緒に寝てもいい』って
それに私、決めたことは覆したくないの。
星河悠真
瑠璃……
じゃあ、いいのか?
桜ノ宮瑠璃
だから、そう言ってるじゃない!
星河悠真
そっか……
ありがとな。瑠璃
そう言って悠真は私に初めて笑顔を見せてくれた。

……悠真の笑顔って優しいんだ。
もっと、見ていたないな。という私の淡い期待は悠真がいつもの表情に戻ると同時に消え去った。
―――数十分後―――
つ、ついにこの時が来てしまった……。
あー、どうしよう……
簡単にいいよなんて言うんじゃなかった。数十分前の私のバカ!
ヤバい、どんどん緊張してきた。
心なしか、心臓も脈打つのが速くなってるし。



えーい!
女は度胸!当たって砕ければいいのよ!
…………なんて、考えてもこの状況がどうにかなるわけでもない。


すると……
星河悠真
そこに立ってられても困るんだけど?
いつのまにかお風呂から出てきた悠真が後ろから声をかけてきた。
桜ノ宮瑠璃
あ…ごめん
星河悠真
はー…
た、ため息ってなんで…?
別に立ってただけでため息なんてつかなくてもいいじゃん。
星河悠真
なあ、瑠璃。
桜ノ宮瑠璃
な、なに?
星河悠真
別にいちいち謝らなくていいから。
桜ノ宮瑠璃
ごめん
星河悠真
だから!
桜ノ宮瑠璃
ご、ごめん
星河悠真
…………切り無さそうだからいいやもう
星河悠真
あのさ、そんなに緊張してるんだったら
無理に一緒に寝なくていいんだからな。
え……悠真、私が緊張してるの分かったんだ……
やっぱり、私のことなんでも分かるんだな。

私は、そんな小さなことが凄く嬉しかった。
…………途中まで分かってることから逃げるのはもうやめよう。そもそも私のキャラじゃないし。

もう認めよう。
私は悠真のことが好き……
先輩のことが好きだと思っていたけど、本当は好きじゃなかったってことにも気づいた。
悠真の言葉ひとつで私の心臓は凄くドキドキしてる。
でも、先輩はそうじゃなかった。

私は、気づかなかっただけでこんなにも悠真のことが大好きになっていたんだ。


でも、なおさらどうしよう……
悠真のことが好きって気づいて、一緒になんて寝たら私の心臓もつかしら?というか、今日寝れるかしら?
なんて、一人で考えていたら悠真が心配したように
星河悠真
おーい!
瑠璃、大丈夫か?
なんて、声をかけてきた。

私は、それだけでもう嬉しくてさっきから速い心臓がさらに脈打つのが速くなってしまった。

ヤバいな~
私、本気で悠真のことが好きなんだ……

なんか、沙絵が私のことを鈍感って言った理由が分かった気がする。
桜ノ宮瑠璃
うん!大丈夫だよ!
ありがとう、心配してくれて
星河悠真
別に心配したわけじゃ……
桜ノ宮瑠璃
あとね、私は確かに緊張してたけど
悠真と一緒に寝たいって気持ちは変わらないよ
桜ノ宮瑠璃
だから、一緒に寝てください!
星河悠真
瑠璃……
ぷっ……あはは!
桜ノ宮瑠璃
なっ!人が頼んでるのに笑うなんて失礼よ!
星河悠真
ごめんごめん。
いや……瑠璃が急にかしこまったのが可笑しくて……
つい…な
桜ノ宮瑠璃
ついじゃないでしょ!
星河悠真
くっくっく……
桜ノ宮瑠璃
って、なんでまた笑うの!
星河悠真
いや…だって
…………でも、緊張はほぐれたんじゃないか?
あ……確かにさっきはあんなにも緊張して心臓だってバクバクだったのに今は落ち着いてきてる。

もしかして、私の緊張をほぐすためにわざとやったのかな?

桜ノ宮瑠璃
ありがとう、悠真
って私が急にお礼を言ったからか悠真は一瞬びっくりしてたけどすぐいつもの顔に戻った。
星河悠真
そっか、なら良かったな。
桜ノ宮瑠璃
で、あの悠真……今日は……
星河悠真
ああ、瑠璃、一緒に寝れるんだろ?
じゃあもう寝ようぜ。
明日、学校だし
と言うと、悠真はさっさと部屋の中に入っていった。
私も悠真の後を追いかけてベッドに行くと……
星河悠真
瑠璃どっち側で寝る?
好きな方選んで
って聞いてきた。
このベッド、割りと大きいのでベッドの端と端で寝ればお互いの体には絶対に触れないので安心した。
なので、別にどっち側でも良かったけれど適当に私から見て左端を選んだ。
桜ノ宮瑠璃
じゃあ、こっちで……
星河悠真
リョーカイ
星河悠真
俺、もう寝るから
おやすみ
なんて、ベッドに入って早々に悠真が言ったかと思ったら、すぐに寝息が聞こえてきた。

悠真って意外とすぐ寝ちゃうんだな。
でも、少し悲しいかも。だって、すぐ寝るってことは私といても意識してないってことでしょ?

私は、悠真が隣にいるってだけで、こんなにもドキドキしてるのに!


まあ、悠真だし。分かってたことだからいいけどね。

………………私今日、寝れるかな?

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