先生からのペナルティから数日後、私達は一ヶ月後に行われる文化祭の準備をしていた。
私達のクラスの出し物はありきたりだけど、メイド&執事喫茶になった。個人的には恥ずかしいけど……
ちなみに、沙絵のクラスはうちのクラスみたいにありきたりなコスプレ写真館らしい。裁縫の得意な沙絵がほとんどの衣装を作っているらしい。
沙絵……凄すぎでしょ…。
流石としか言いようがないよ…
沙絵も頑張ってるし私も頑張らなきゃ。
……そう思ったら、お互いにクラスの出し物を言い合ったときの沙絵の言葉を思い出した。
『いい?瑠璃。
瑠璃のメイドコスで星河君をメロメロにして他の女子に目がいかないようにするのよ。
分かった?』
〝分かった?〟って、言われても……悠真私には興味ないだろうから意味ないよー
うー、私は悠真のこと好きなのに……
悠真にはこれぽっちも意識されてないと思うと……少し…いや、すっっっっっっっっっごく!!!!嫌だけど
と、また小声で言った言葉が前は沙絵に今回は悠真に聞かれてしまった。(……といっても、悠真が聞いてたってことはあとで知ったことだけど……)
【悠真side】
今、たまたま瑠璃の近くにいたら『駄目なのかな』なんて言っていた。
……もしかして瑠璃、例の先輩に告ろうとしてるけどその先輩は瑠璃がタイプじゃないとかか?
だとしたら、瑠璃を俺に振り向かせるチャンスかもしれない。
……って、何考えてんだよ!瑠璃の心は瑠璃のものだ。俺が縛れる権利なんてないだろ!……あの人のように……
急に黙りこんだ俺を心配して親友であり家族以外で俺の一番の理解者である西原大和(にしはらやまと)が話しかけてきた。
……とか、見栄を張ってしまったが実は朝から少しだるかった。でも、保健室にはいきたくない。あの人がいるから…
そんな俺の心情を見破ったのか大和は謝ってきた。
大和らしい励ましの言葉を貰ったけど、俺がそう言うと、近くに瑠璃がいることがやっとわかったのか、瑠璃の方をチラッと見てから急に焦ったように、手を振りながら逃げていった。
そして今の俺はというと、瑠璃に今の会話が聞こていないか内心焦っていた。
…………やべー、俺どんだけ瑠璃に惚れてんだよ。
最近俺は、瑠璃に対する気持ちがおさえられなくなっている。きっと、あの事故でキスをしてしまった時から……
あのあと、瑠璃を一緒のベッドで寝ないか誘った。
瑠璃は、承諾してくれたけど、本当はしないでほしかった。
一緒のベッドで瑠璃が寝てると思うと、触れたい気持ちをおさえるのに必死だった。
本当に自分に笑えるぐらい、瑠璃に惚れすぎだな。
と、また考えていたところにこの間転入してきた成宮百合香が話しかけてきた。
そう、成宮から言われると俺は瑠璃の方をチラッと見た。
…ホッ。今の会話聞こえてなさそうだな。
【瑠璃side】
いま、悠真と成宮さんが一緒に教室を出ていった。
悠真は去り際私のことを見てきた。
…もしかして、私がこの会話を聞いてて不快に思っていると思ったのかしら?
うん、それはないな。
だって、あの悠真だし。
でも、嫌だとは思った。なんて心が狭いんだろうって……こんなとき沙絵がいてくれたらすぐに相談できるのに
【悠真side】
今、成宮の後をついていき空き教室に来た。
そう、不適に成宮が言うといきなり背中を押されて空き教室の床にバランスをこわして倒れてしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!