第16話

嵐を呼ぶ文化祭chapterTHREE
101
2019/04/21 10:00
【瑠璃side】
私は今、校舎のあるところに隠れていた。沙絵に教室に戻るって言ったけど、本当は、どこかに隠れたかった。
……悠真、私のこと心配してるかな?というか、心配してほしい



【沙絵side】
私は今、瑠璃を泣かせた張本人、星河悠真といる。
星河のことは元々、気にくわなかったけど、瑠璃を本気で心配してるのが伝わって、少しだけ認めてあげようかと思った。…………不本意だけど



それにしても瑠璃、どうして隠れたりしたんだろう?瑠璃のスマホのGPSで居場所はわかったけど私はどうしても瑠璃が隠れた理由が分からない。



しかも、瑠璃が隠れてる場所がまさかの理事長室だし……お祖父ちゃんもよく入れたな…いや、そういえばお祖父ちゃんって、昔から瑠璃に甘いんだった。本人曰く、孫がもう一人増えた感じでかわいいらしい。
倉科沙絵
で、どうするの?
このまま、理事長室まで行く?
私は、猫をかぶることも面倒くさくなり、「いつもの私」で話していた。でも、星河はそんな私には目もくれずただひたすら瑠璃のことを心配していた。


…………こいつ、そんなに瑠璃のことを…………
なんて、瑠璃を探しているとき何回思ったんだろ?
瑠璃を泣かせてる時点で、私の中での評価は最底辺だけど、瑠璃を本気で想ってるところにかんしては認めざるおえないしなー
…………でも、だからって泣かせたことはやっぱり許せない!
星河悠真
当たり前だろ!
倉科沙絵
…………フッ
分かったわ。行きましょう。
―――理事長室―――
理事長
それにしても、いきなりどうしたのかね?
ここにいさせてほしいなんて
瑠璃ちゃん?
桜ノ宮瑠璃
あ…えーと
今、教室にいたら辛いものを見てしまいそうで……
だから、ここならなにも見ずに済むと思って……
ごめんなさい。理事長先生に迷惑をかけてしまって
理事長
別に迷惑だとは思っとらんよ。
可愛い孫(的な存在)にお願いされて断るじじいは
おらんよ。
桜ノ宮瑠璃
ありがとうございます。
コンコンッ

その時、私が理事長先生(沙絵のお祖父ちゃん)と話していると、誰かが扉をノックした。

ドクッ!
ま、まさか沙絵じゃないよね?
それとも、悠真?
…………そんなわけない。悠真は私のことなんて気にしてないだろうし、沙絵が教室に私がいないことを知ってるはずがないもの。


けど、私の予感は的中してしまい一番会いたくない人と顔を会わせることになってしまった。
星河悠真
ハァ…ハァ…
やっと見つけた。なんでここに……
桜ノ宮瑠璃
こ、来ないで!
今、悠真とは会いたくないの!
倉科沙絵
瑠璃……
お祖父ちゃん、瑠璃なんか言ってた?
理事長
いや、なにも言っとらんよ。
倉科沙絵
そっか……
桜ノ宮瑠璃
嫌なの!悠真が成宮さんと仲良くしてるのを見るのは!
私は、ここが理事長室だということを忘れて、ただ感情のままに叫んでしまった。


お嬢様としては、はしたない姿かもしれないけど、
今しかないと思ったから。悠真に私の思いをぶつけるのは
星河悠真
え……?
悠真は、驚いて目を丸くしていた。
そりゃそうよね。いきなり、叫んだりしたら誰だって驚くもの。


……すると、悠真は
星河悠真
それ…どういう意味?
星河悠真
俺が成宮と仲良くしてるのを見るのが嫌だって言う意味?
悠真に、嫉妬してるのがバレてしまったー…
もう、あとには引けない
こうなったらもう、お嬢様モード全開で早く心のうちをいってしまった方がいい
桜ノ宮瑠璃
そ、そうよ!
だって、悠真は…わ、私の婚約者じゃない!
他の女の人と仲良くしないで!
あ~(泣)
どうしてこんなに可愛くないんだろう…
本当は、もっと違う言い方したかったのに…



なんて、私が後悔しているといきなり悠真に抱き寄せられて、気づいたときには悠真の腕のなかにいた。
桜ノ宮瑠璃
ゆ、悠真…///
星河悠真
瑠璃……
なんだ~そんなことか……
教室にいないし俺なんかしたと思ったから焦った~
桜ノ宮瑠璃
そ、そんなこと!?
今、『そんなこと』って言った!?
私にとっては『そんなこと』で済まされないことなのに!



なんで一言で済ますのよ!
って思っていたら、悠真が―
星河悠真
そんなことなんだよ。
瑠璃が危ない目に遭ってなくてよかった。
俺…瑠璃が好きだ。
……………………ん?
今、なんか悠真、爆弾発言しなかった?
私が「好き」とか言った?


私は、気になって悠真の腕のなかから、上目遣いで覗いた。
桜ノ宮瑠璃
ゆ、悠真今……
私のこと『好き』って言った?
と、私が言葉にして聞き返すと悠真は己の失言に気づいたようにしまったという表情をした。
星河悠真
あー、い、今のは聞かなかったことにして……
と、悠真が言いかけたとき沙絵がふざけんじゃねーぞというように口を挟んできた。
倉科沙絵
おいー……
星河……今テメーなんつった?
さ、沙絵……
完全に本性が出てて、なんだか怖いよ?
倉科沙絵
聞かなかったことにしろ?
ふざけんなよ!
お前、瑠璃がどんだけお前のことで悩んだのか知ってるのか?
瑠璃からもなんかいってやりな!
……こ、怖い……
そして私は、沙絵の迫力に押されてしまい…ついつい自分の想いを言ってしまった。
桜ノ宮瑠璃
わ、私だって、好きなの……悠真が……
星河悠真
………………え?
悠真はそれだけ言うと固まってしまった。
今までの悠真からは考えられないような反応に困っていたら、理事長先生が
理事長
いやー青春だねー
うんうん。
いいものを見せてもらったよ。
そ、そうだったー
ここ……理事長室だったの忘れてた。
沙絵は沙絵で、うんうんなんて頷いてるし!

いや!よく言った!みたいにしないでよ!
沙絵とお祖父ちゃん!


……と、お祖父ちゃんじゃなかった。
理事長先生!
私は、いまだに固まっている悠真をチラッと見たて、声をかけてみた。
桜ノ宮瑠璃
悠真―…
へーき?
悠真は私の声が聞こえたみたいで、「あぁ」なんて言ってる。
それで、我に帰ったみたいだった。
星河悠真
ごめん…
不意打ち過ぎて驚いてた。
桜ノ宮瑠璃
え?
なんで?
星河悠真
だって……
悠真は、そこで一旦言葉を区切ってから
星河悠真
俺なんか瑠璃に意識されてないと思ってたから。
と、私と同じことを言った。

桜ノ宮瑠璃
そんなこと…
私だって、悠真に意識されてないと思ってた……
私がそんなことを言うと、また悠真は、私を抱き締めてきた。


優しく、だけどもう離さないというように……
悠真…もう離さないよ


私達は、今いる場所が理事長室だってことを忘れてしばらく抱き合っていた。


でも、このあとまさかあんなことが起きるなんてまだ知らない私達は、今は想いが通じたこの瞬間をただ噛みしめるように抱き合った。

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