スマイル視点
そろそろ来るかな…。
放課後、誰もいない図書室で俺はあの子を待っていた。
俺は哲学の本から視線だけ図書室の扉のほうに向ける。
ガララッ
あの子が来た。俺は慌てて視線を本に戻し、何でもないふうにした。
あの子は俺が座っている机に駆け寄った。
そっか、と微笑むあなた。その微笑みを見るだけで俺の胸は高なってしまう。
露骨に目を逸らしたが、今はこの気持ちをあなたに悟られないようにするのに必死だった。
あなたは目をキラキラと子供のように輝かせながら俺を見た。
数週間前
あなたは俺がよく哲学の本を読んでいるため、興味がわいたらしい。
そこで哲学にそこそこ詳しい俺が自分に教えてほしいと言われた。
俺は正直すごく嬉しかった。あなたのことが好きだからだ。だが、その嬉しさを悟られるのが癪に障るので、少し渋って了解した。
あなたは覚えも、理解も早くて俺的には哲学をなかなか話す機会があまり無い、せいぜいTwitterぐらいだ。
だから哲学の話しをするのは好きだった。
俺が1通り話終わるとその事について俺達は意見を交わし合う。
熱っぽく語るあなたを見つめるのも俺は好きだった。たださえ俺の趣味を好きな人に教えられるという立場にいるのに、こんなに幸せでいていいのか?
ふんわりと笑うあなたを見て俺もつい笑ってしまった。
あなたが急に大声を出すのでビックリしてしまった。さいわい図書室には誰もいないのでほっとした。先生に見つかるとやばいからな。
どうやら、俺が笑った事を言っているらしい。
…まぁ、あんまり笑わねぇけどさ
俺は笑わないっていうか、笑うタイミングが恐ろしく悪い。笑わせるような事を誰かが言ってても俺はぼんやりしてて聞いてなかったりする。
急に好きだよなんて言われ俺の顔が赤くなりそうだったので、片手で口元をおおった。
いや、違う!あなたは俺のあだ名が好きだと言っただけでそう言った意味じゃない!と自分に言い聞かせ、顔の火照りを引こうとしたが。そう考えている俺もあなたの発言に勘違いしていた、と思いその羞恥心で顔がまた赤くなり一向に顔の火照りが引かなかった。
首をかしげて俺を見るあなたに俺は早口で言った。
そっか、とあなたは笑うと口を開いた。
俺はまたそっけない返事をしてしまった。俺はひたすら羞恥心を隠すので一杯一杯だった。
♪~~♪~~♪~~♪~~♪
下校のチャイムがなった。時計はもう6時を刺していた。
学校を出て2人で横並びに歩く。特に話すことはなく、歩き続けた。あなたの家が近くなった頃あなたは口を開いた。
あなたは俯きながらゆっくりと喋った。
…どうした?気分が悪いなら早く家に返した方がいい。
そこで俺は察した。察したとき俺は正直ものすごく嬉しかった。
顔が赤くなった。だけど、俯いてるあなたの顔も耳までも真っ赤だった。
背を向けて帰ろうとするあなたの手を俺はいつの間にか掴んでいた。
振り返ったあなたの顔は真っ赤で、今日一番綺麗に見えた。
俺はあなたの目を見て言った。
あなたは少しためらった後決意したように口を開いた
上目遣いでしかもちょっと涙目で言ったあなたがたまらなく愛おしかった。
俺は俺の唇とあなたの唇重ねてから言った。
まだ早い一番星が俺達を優しく見守ってるような気がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!