純白の部屋を見事歴代最短記録で脱出した俺は、純白の部屋の貸切権を見事ゲットした。
そして、今日。俺は人生最大の大博打をする。
純白の部屋に戸惑っているユカリに向けて、俺は歌った。密室だからこそ、響く声に愛の言葉をたくさん乗せて、俺は切々と訴えていく。
純白の部屋の中、純白のベールを掛けて隠していたカラフルな花束を渡しつつ、俺はユカリにプロポーズをする。
流石にプロポーズはユカリも予想していなかったらしい。しばしの間、呆気に取られた表情を浮かべていた。だが、すぐに大きな笑みを浮かべ、俺の手の上から花束ごと握り占めてくれる。
微妙な面持ちになってくる俺を見て、クスリとイタズラな笑みを浮かべる彼女……いや、婚約者になったばかりのユカリはあっけらかんと言い放つ。
何だかんだ言いつつ、俺の一大イベントは無事これにて閉幕。
純白の部屋でムードたっぷりの演出を恥ずかしげもなく行えたのは密室だから出来たこと。他人の目を気にする必要がないからこそ出来たこと。
存在を聞くだけで怯んでしまう密室だが、アイデア次第で可能性は更に無限に広がっていくだろう。
【end.】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。