第3話

思い出せない記憶
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2018/05/14 11:56
「私の名前は、、、だよ!」

彼女が言う。満面の笑みで。思い出した?って言ってきそうな雰囲気。
だけど僕は君の名前を聞いても思い出せない。頭が思い出すなと蓋をしているような感じだ。聞いたことあるような名前なのに。
「ごめん、やっぱりわからない。」

自分でも思い出せると思った。名前を聞けば君が誰か、どこで会ったのか、、、全て思い出せると思った。
ふと君を見ると悲しそうな表情をしてた。今にも泣きそうな、何か言いたそうな表情。
僕が声をかけようとした時、早足でその場を去っていってしまった。そんな彼女の目には涙が浮かんでいた。
その瞬間、僕は後悔した。女の子を泣かせてしまった。全て自分の責任だ。

「...でも、思い出せないものはしょうがないし...。」

そして僕は携帯の電源をつけた。ファイルを開く。そこには僕が今まで撮った写真が保存してあった。昔撮った写真を見る。...ない。1枚でもあればと思ったが、彼女の写った写真はなかった。
そして僕は、無意識に彼女の名前を言っていた。
「、、、。」

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