第3話

無感情
667
2018/06/28 13:57
隣の部屋をノックすると、結依が出てきた。
黒崎結依
桜ちゃん、どうしたの?
氷川桜
何か連絡でね…
結依にファイルを渡し、説明する。
ついでに翼から教えて貰ったことも一応伝えといた。
すると、結依は真剣な顔になる。
黒崎結依
不思議だね…こんな変なことが起きるなんて。
氷川桜
うん…
黒崎結依
……あ、少し話が変わるんだけどね…
氷川桜
ん?
黒崎結依
気になることがあって…
そういうと、結依は扉を閉めて廊下に出た。
氷川桜
気になること?
黒崎結依
たまに瑠奈ちゃんがトゲのある言い方をするから何か怖いの…
氷川桜
瑠奈ちゃんが?
黒崎結依
そう、よく幸輝君の幼馴染の話
をして「結依は峰本君の幼馴染
でいいな〜!」って…
氷川桜
あ…
私も同じようなことを言われる気がする。
……美璃に。
翼の姿が見えると、「桜ちゃんは神田君の幼馴染でホント良いよね〜」みたいなことをよく言われる。
確かに翼は小学校の時からモテていた。
私と結依から見たらよく分からないが、友達曰く翼はカッコイイらしい。
そのおかげで私は……いや、今は関係ない。
翼は中学校でもモテていた。
幸輝も翼まではないがモテてはいたらしく、バレンタインデーとかに自慢話を聞くはめになっていた。
幸輝はスポーツマンで明るく、いつも笑顔なのでモテる理由は充分だと思う。それに比べ翼は何でだろう?
翼は昔はよく笑っていた。あの事故と共に翼から笑顔が消えた。事件以降はいつも静かで真顔みたいなことが多い。
…私は翼が怒ったり泣いたところは今までに過去も含め一度もない。
けど、幸輝と結依は1回だけ見たことがあるらしい。いつ怒ったかを聞くと「忘れた。」と言って答えてくれないけど。
黒崎結依
お〜い、桜ちゃん?
氷川桜
え?あ、あぁ、ごめんね。私も
同じようなことがあるんだ…
黒崎結依
桜ちゃんも!?
氷川桜
うん…まぁ、嫌な予感はきっと
気のせいだよ!
黒崎結依
そ、そうだよね!それじゃあ、
連絡ありがとう!
氷川桜
うん!
ファイルを結依に渡し、部屋に戻る。
そして、二段ベッドの上側にダイブした。
氷川桜
う〜ん…なんでだろ……
翼は4年前に交通事故に遭った。赤信号なのに飛び出てしまい、軽トラックに轢かれてしまったのだ。その時、幸輝が一緒にいたらしいが聞いたところ、「呼び止めたのに轢かれる寸前で気がついたみたいだった。」ということ。
それは翼にしては珍しいことだった。
翼はいつも話しかけたらスグに反応してぼっとしている時間がほぼ無いから。
ましてや、歩きながらぼっとしてるなんて…
…翼らしくなかった。
ふと、スマホに視線を移すと待ち受けの4人で撮った写真が表示されている。
もう高校生ねぇ…みんな、初めて会った時は幼稚園でそのまま小学校へ、クラスも奇跡的に同じで…中学校は翼が本気で頑張って勉強したから4人で同じところに入れて…
今思えば、もう12年の付き合いになる。
氷川桜
12年かぁ…
樋山美璃
何が?
氷川桜
ひゃっ!!
下からいきなり声が聞こえたので小さく悲鳴をあげた。
顔を覗かせると、シャンプーの匂いを漂わせる美璃が下でお風呂道具の片付けをしている
氷川桜
お、おかえり〜
樋山美璃
ただいま?何か考え事?
氷川桜
まぁね、お風呂どうだった?
樋山美璃
いい感じの湯加減だよ!桜ちゃんも早く入ってきなよ!
氷川桜
うん。
そして、私はお風呂道具を持って風呂場へと向かった。

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