探し続けるが、見つからなかった。
すると…
教室に入って来たのは世良駿斗と取り巻きの
女子、宇海朱梨と野坂美幸。そして、駿斗の親友の小泉友也だった。
朱梨が扉に鍵を閉めながら入る。
私は不審に思い、思わず後退りをした。
世良君が生徒手帳を手に持っている。
取ろうと、手を伸ばすと避けられた。
生徒手帳の最後のページを朱梨に見せてる。
写真を指して話し続ける。
も、もしかして……
普段なら絶対にこんなことは聞けないが、
このときはすんなりと聞けた。
それに恥じらいも無く答える世良。
世良がジリジリと近付いてくる。
私はそのまま後退りを続け、遂に壁に背中がついてしまう。
これ以上後ろに行けない…!
朱梨と美幸に両腕を掴まれ身動きが取れないようにされた。
小泉が扉の前に立つ。
まさか……
世良の意図に気付いた途端、青ざめる。
そう言いながらどんどん顔を近付けてくる。
その途中、ノックが聞こえた。
コンコン…
廊下から声が聞こえてくる。
その声は結依だった。
口を世良の手で塞がれる。
結依がそう言うと、足音が離れて行った。
違うよ!!私はここにいるよ!!
既に恐怖が勝ち、声が出なかった。
世良が手を取り、再び顔を近付けてくる。
涙声で睨みながら言う。
少しでも前に出たら唇が触れるくらいに近付かれた。抵抗しても勝てない。
その瞬間、私は昔のことを思い出していた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!