先生「ほいじゃーここで解散ー
気をつけて帰れよー 」
アフレコの見学が終わり
みんな先生の声で
パラパラと帰っていく
佐久間さんのところ……
まだ、アフレコ終わってないよな……
……座って待ってよう
そう思い
ロビーのソファーに腰掛ける
なんか……落ち着かない
俺がいて変じゃないか……?
通り過ぎていく人の目が気になって
思わず視線を落としてしまう
10分くらい待っただろうか
俺のところに向かって
近づいてくる足音があった
佐久間さんに手首を捕まれ
どこかに引っ張っていかれる
佐久間さんが連れてきたのは
駐車場
佐久間さんは車のドアを開け
俺を車の助手席に投げ込み
佐久間さんも運転席のドアから車に乗り込む
────ドサッ
佐久間さんが
俺に覆いかぶさり
椅子と一緒にそのまま押し倒す
噛み付くみたいな
キス
佐久間さんの舌が……っ
口にっ……入り込んで来るっ……
佐久間さんが
ようやく口を離してくれた
言えない
あのことは
言える、わけが無い
あんなの言ったら
重いって
絶対……引かれる
ギリッ
と
佐久間さんの俺の手首を握る力が強くなった
な……に
その顔
なんで、佐久間さんが……
そんなに悲しそうなんだよ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!