佐久間side
千星が隣の部屋に行った後
俺は大きくため息をついた
千星に触れた時
顔を近づけた時
あいつは
震えていた
怖がっているようにも見えた
あそこで千星が
目をつむっていなかったら
間違いなく、キスをしていた
ダメだって思ってんのに
理性がたもてない
あいつの前だと、自分でもどうしようもないくらい
あいつに触れたくなる
あの熱を、もう一度
肌で感じたくなる
ベランダの扉を開けて
外に出る
頬にあたる夜風が気持ちいい
冷たい風が
ざわついていた俺の心を
ゆっくりと、落ち着けてくれる
そういや、あいつ
俺が声優だって知って
すごい驚いてたな
あいつそういうのに興味あるんだろうか
改めて思う
……俺はあいつのこと
何も知らないんだな
もっと、ちゃんと
あいつのこと知りたい
グラタン以外に好きな食べ物あるのか、とか
好きな動物とか
くだらねぇ事ばっかだけど
明日の朝は、とびきりうまい飯を作ろう
あいつと
笑って、話すことができるように
次の日
朝起きてみると
千星の衣服や持ち物は
全部なくなっていて
あいつは、居なくなっていた
佐久間side end.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。