第6話

𝑠𝑖𝑥
634
2020/11/03 04:39
HRが終わると、
あの2人はあっという間に女の子たちに囲まれていた
私は自分の席からそんな様子を眺めていた
その時、制服のポケットに入れていたスマホが鳴った
お母さんからだ……
内容は見なくても分かる



私の両親は普段ハワイに住んでいて、3日前に1年ぶりに帰ってきた
だから今朝は家にたんだ

たまに帰ってきても、いつも私が学校に行っている間にハワイに戻ってしまう

はっきり言って寂しくないわけじゃない
帰っても誰もいないさみしい家

寂しいけど、寂しいって言いたくない
面倒くさい子だって思われたくないから
お母さんやお父さんは私のためにも
忙しく働いているんだから、我慢しなくちゃ……
だから私はひとり寂しさを埋めるように北人の家によく行く
というより、お世話になっている
今日はおばさんもおじさんも仕事で遅いんだっけ、
北人と一緒にいてって言われたけど、


ちらっと北人を見ると、
男子生徒
男子生徒
北人〜、壱馬〜、カラオケ行かね〜?
8時くらいまで
女子生徒1
女子生徒1
あ、私も行くー!
女子生徒2
女子生徒2
私も!
北人
北人
じゃ、みんなで行こうぜ
遊ぶのか、

そりゃ高校生だし新しいクラスメイトと遊びに行きたいよね

私のワガママで止めるなんて、そんなことできない

今日はひとりか、
百合
百合
あなた?どうしたの?
元気ないけど...
北人達から目を逸らし、スマホを膝の上でギュッと握りしめていると、百合が話しかけてきた
You.
You.
え、あ、大丈夫
ちょっと考えごと
百合
百合
そう?ならいいけど
よかった、上手くごまかせた
百合には心配かけたくないから








今日は始業式だから午前中で終わり
帰りのSHRが終わるとみんな帰って行く

もちろん北人は遊びに行ってしまった

百合は家族との用事があるみたいで、
さっさと帰ってしまって

私はひとりで帰ることにした

トボトボと1人校門に向かって歩き出す

朝、北人と一緒に登校した時の騒がしさがウソのように道は静かだ

今日どうしよう

なんて考えていたら急に涙が込み上げてきた

You.
You.
...っ、ぐす...
____ドシッ
You.
You.
わっ、!?
いきなり頭に重い衝撃が走った
北人
北人
なに強がってんだよ、寂しいくせに
え......
振り返ると、頭の重いものは北人の腕だった
私は慌てて涙を拭う
You.
You.
ほ、北人?
北人
北人
...なんだよ
You.
You.
遊びに行ったんじゃないの?
そう言うと、私の頭に腕を乗せたまま、
北人
北人
お前のことだからまた強がって誰にも言えずに
一人でいるんだろうなって思って断ってきた
と言って、優しい笑顔を見せてくれる
うそ…本当に?私のため……?
北人
北人
今日おばさんとおじさん、
ハワイに戻ったんだろ?
You.
You.
なんで知って、
北人
北人
お前見てりゃわかる
百合でもどうして私が元気ないのか気づかなかったのに、
北人
北人
あぁーあ、今頃盛り上がってんだろうな〜
北人の言葉にキュッと胸が痛んだ
やっぱり行きたいんじゃん……
You.
You.
行きたいなら行ってきていいよ
私もう大丈夫だから、
私は足を進めた
You.
You.
北人んちに先に帰ってるから
北人
北人
アホ
ア、アホ〜!?
You.
You.
アホって、なっ
北人
北人
お前どうせ泣くだろ、またひとりになって
え、、?
北人
北人
久しぶりに帰ってきたのに、おじさんとおばさんはまた別れも言わないで帰ってしまう。それでいつもお前が泣いてんの知ってんだよ。
北人は、
北人
北人
何年幼なじみやってると思ってんだよ
と付け加えて、私の頭をポンっとなでた
なんで……
なんで、こんなときだけ優しくするの?
いつも、いじわるのくせに
冷たいくせに……
昔からそうやって私が落ち込んでる時はすぐに気づいて、優しくするんだ

私の目からさっきの悲しい涙とはちがう、嬉し涙がこぼれた
北人
北人
おい、おいてくぞ
You.
You.
あ、待って
私は急いで北人の後を追った

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