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第1話

眠れない夜のこと
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2023/07/20 10:07




もう辞めな。


俺はそう彼に言った。


息してるだけだよ。
と彼は吐く煙で応えた。





俺は事後に彼が吸う煙草が大嫌いだ。
紙巻き独特のあの香りが俺はどうも好きになれなかった。

「洋平さん、好き。」

煙草の後、彼はいつも俺を抱いてくれる。
けど、煙まで俺を抱くのが気に食わない。
彼だけが抱いてくれればいいのに…



彼のスモークはヘビーを超えた。
もう手遅れだった。
俺が何を言っても息してるだけだと応えては笑顔を煙と一緒に消した。

「洋平さん、コンビニ行こ」


「うん。」

でも、どうしても彼が愛おしくて、どこに行くのにも着いて行く癖がついた。










「洋平さん、これ美味しそう。」

「ん、けんすけ好きそう。」

「買っていい?」

「いいよ。」


戻ったくしゃくしゃの笑い顔で俺の分もカゴに入れてくれた。



けんすけの好きなところは律儀に銘柄ではなく番号で店員さんに伝えるところ。
たまにいる銘柄を略して言って新人店員さんを困らせる嫌なおっさんとは違ってそういうところはしっかりしている。

いつもありがとうございます。と金髪の女性定員が微笑む。
とても親切でいつもよく会う馴染みのある店員さんだ。



俺はコーヒーを片手にけんすけは煙草を片手にコンビニを後にした。

二人で持ったビニール袋に、夜の街灯が反射し虫が近寄る。
まだまだ暑い日が続くみたいだが虫の音色は秋になった。





帰ってまた一服しようか。


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