教室に戻る時に、別のクラスはもう授業が始まっていた。
また、怒られる。
そんな事を考えながら駆け足で教室へと向かった。
教室の前の廊下に来たので、荒々しく弾んだ息を収めようと、一回足を止める。
こっそりと廊下から教室の様子を疑う。
まだ先生は来ていないみたいだ。
「よかったなぁ…」と呟いて教室に入ろうとした時、いきなり頭上から太い声がした。
クラスからは、沢山の笑い声。
私が遅刻をした訳じゃない__というのは皆分かってたはずなのに…
……私がこれまで生きてこられたのは、ある一つの「夢」があるからだ。
誰にも言えない「夢」。
それは「普通の日常を送ること」だ。
普通の生活が送れたなら…友達がいたり、家族旅行に行ったり、もしかしたら“恋人”だっていたかもしれない。
昔憧れていた「シンデレラ」。
シンデレラの名言といったら、「夢は叶えるもの」だと思う。それが心の支えとなり、今の私がいる。
だから、いじめに負けて人生は終わらせたく無い。
なんなら、その「夢」を叶えてからの方がいい。
誰にも聞こえないような小さな声で、そう宣言した。
温かい春の風が、寄り添うように、足に触れた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!