第10話

温真side
556
2021/11/07 08:23
3年全員で行く事を知った時から、僕は胸のドキドキが止まらなかった。
恵奈ちゃんに会える____







始まりは2年前。
中学の入学式の時、吹雪の様に舞う桜の中。
僕は1人、ぽつんと桜の幹に座っていた。

きらきらした木漏れ日を浴びて周りの様子を眺めていると、1つ向こうの桜に1人の女の子がいた。
下を向いたその子の横顔は儚げで、深い青色の瞳には一筋の光。
その吸い込まれそうな瞳をじっと、眺めていたのだ。

しばらくするとその子がこちらを見て、きょとんとした顔になった。
さっきまで美しい表情をしていたのに、いきなり可愛い表情になったので、僕は一瞬で恋に落ちた。
これが一目惚れってやつかな。

その子が恵奈ちゃんだ。
そこから1ヶ月が過ぎて、クラスに慣れてきた頃。
恵奈ちゃんは1人で頑張って、仕事も全部こなして…僕も感心しているところじゃないな。と思い、手伝った事もある。
こうして1年を通して、僕は恵奈ちゃんのことがより一層好きになった。
この2年間の間に何度も告白の呼び出し手紙を書いては何度も消して、を繰り返していると、気づけば“地球最後の日前日”になっていた。
その日の放課後。教室から出ると同時に大きな音が聞こえた。
振り向くと、恵奈ちゃんが倒れていた。
それが、あの時だ。
2人で話している時は、もう夢のような時間で。普段笑顔を見せない恵奈ちゃんの笑顔は天使の様だった。




そんなことを思い出している時、恵奈ちゃんの声が聞こえてきた。
恵奈
恵奈
わっ!
温真
温真
⁉︎
びっくりして後ろを振り向こうとすると、体が傾き、倒れてしまった。

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