キーンコーンカーンコーン。
朝のチャイムが学校中に響き渡った。
窓からは今にも零れ落ちそうな木漏れ日。
5月の涼しいそよ風に乗って、鳥の囀りも聴こえてくる。
そんなクラスメイトの会話を聞きながら、いつも通りに朝の準備をする。
話はまだ続いているらしい。
机の上に座って、輝いた瞳で青春を楽しんでいる。
私にはとても無理なことだ。
人生に楽しみなんて1つも無かった。
友達もいないし、恋なんてしたことない。
虐められているのもあって、どんどん暗い性格になっていく。
例のいじめっ子が来た。
もう1人いて、いつも自分の仕事を押しつけては、意地悪をするばかり。
最初は無視をされるだけだったので、生活に支障は出なかったが、次第にひどくなり、物を隠されるなどの嫌がらせを受けるようにもなった。
また仕事を押しつけようとしている。
渡されたのは、ビニール袋に入った大量の生ゴミ。
中には腐った野菜や、ビールの缶などが入っており、ナメクジが何匹かうごめいている。
「じゃーね!」と、馬鹿にした顔で2人は笑いながらもとの席に帰っていった。
不意に流れた涙は頬をつたり、教室の床にポタリと落ちる。
早く教室に帰らないと、怒られる…
私はゴミを出して、駆け足で教室へと向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!