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第9話

ロック
音静チヅル
音静チヅル
……はー。
ため息をついて、イヤホンを耳に投げ込む。

強くて速い震えるような激しい曲。
この曲は『僕のキャラ』にはあわない。


だけど、僕の好きな曲で。



──僕は所謂『かわいい』男の子だ。
ゆるくて優しくてほっこりさせる。


そんなキャラを望まれたし、そう演じてきた。


栗原先輩は、噂に違わず……いや、噂以上に美人だった。鈍くておっとりしているかと思いきや、何かを割り切ったような、諦めのようなものが浮かんでいる。
不思議な人。


知れば知るほど魅力的だったし、僕の隣に相応しい美貌を持っていると思った。


那津岡先輩は邪魔だけど、からかうのは楽しかった。
顔を赤くした、『クール』と噂の先輩に、楽しくなってやりすぎてしまったような気がするけど。

音静チヅル
音静チヅル
まだかな…
ぽつぽつと降りだした雨空を見上げる。
栗原ミキ
栗原ミキ
音静くん
音静チヅル
音静チヅル
うわっ!
栗原先輩。

長い睫毛と大きな瞳が至近距離で瞬いて、顔に熱が集まるのがわかる。


不意打ちは、心臓に悪い。
栗原ミキ
栗原ミキ
あ、ロック聴いてるんだ
音静チヅル
音静チヅル
……!
やばい。
間違えた。


先輩を迎えるときはもっと柔らかい曲でも流しておこうと思ったのに。
僕のキャラのように。落胆されないように。


こんなに早く来られるなんて思ってなかっ……
栗原ミキ
栗原ミキ
すごく、良い曲だよね
音静チヅル
音静チヅル
栗原ミキ
栗原ミキ
うん。カッコいいや。音楽のこと、
あまり詳しくないけど
たぶんこれは、日常の。
なにげない会話。彼女は深い意味があって言ったわけじゃないんだろう。

だけど。


『そんなの聴いてるの? イメージと違う』
『ガッカリしたー』

他の、女子とは。
違う。

音静チヅル
音静チヅル
ガッカリとか、しなかった?
栗原ミキ
栗原ミキ
どういうこと?
なんとなく、わかった気がする。

栗原先輩がモテるわけ。
顔が良いからだと思ってた、けど。
音静チヅル
音静チヅル
それだけじゃ、ないのか
栗原ミキ
栗原ミキ
? よくわからないけど、帰ろうよ
音静チヅル
音静チヅル
相合い傘なんてどうです?
栗原ミキ
栗原ミキ
なんで? 私傘忘れてないし
音静くんも傘あるじゃない
的確にバッサリ言ってくるから、アピールはあまり通じないけど。

でも、那津岡先輩とは幼馴染みらしいから。
その長い時間を短時間で埋めてやる。


ずっと濃い時間で。



──惚れさせる、つもりだった。



だけど、いつのまにか。
そんなこと関係なしに側にいたいと思うようになった。

それは、居心地が良いからとか、そういうことで。



──先輩に惹かれているわけじゃないって。




自分に、言い聞かせる。
栗原ミキ
栗原ミキ
音静くん、体痛いの大丈夫?
音静チヅル
音静チヅル
あぁ、はい
嘘なので。

その言葉は飲み込んで、心配してくれている可愛い先輩を堪能する。



学園祭まで……あと、三日を切っていた。