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第12話

昔話の後
栗原ミキ
栗原ミキ
お姉さんは、今も病室にいるの。
ずっと……目を覚まさなくて
一命をとりとめたものの、お姉さんは目覚めなかった。


ベッドに横たわる姿は、今にも儚くいなくなってしまいそうで。
不安で不安で──胸が締め付けられた。
音静チヅル
音静チヅル
そう……なんです、ね
音静くんと二人で、しばらく雨音を聞いていた。
那津岡アカネ
那津岡アカネ
おい、いつまでそうやってるつもりだ
私の目立ちたくないという頼みを聞いて律儀に学校では話しかけず、

ここまでついてきていたらしいアカネが私たちの側に来る。
那津岡アカネ
那津岡アカネ
帰るぞ
私の腕を引き、アカネはちょっと眉をひそめる。
なによ。
栗原ミキ
栗原ミキ
どうしたっていうの?
那津岡アカネ
那津岡アカネ
……バカ
ぐい、と乱暴に目元を拭われた。


……どうやら、私は泣いていたようだ。
気づかなかった。
音静チヅル
音静チヅル
……先輩!
音静くんがぐっと唇を噛んで、私の裾を引いた。
音静チヅル
音静チヅル
何も……言えなくて、すみません
うーん。
栗原ミキ
栗原ミキ
何か言ってほしくて言ったわけじゃないからいいのよ
ただ、そういうわけだから私は結果だけ見ることにするね
手をふり、別れを告げようとして。
急にアカネが音静くんに言葉を投げた。
那津岡アカネ
那津岡アカネ
生半可な気持ちで関わるな
目障りだから……消えろ
那津岡アカネ
那津岡アカネ
泣かせることしかできないようなやつは寄ってくるな
確かな怒りがそこにあって。

音静くんが何かを言う前に、アカネが私の手を再び引いて歩き出す。
力が抜けてしまった。

傘をさすのも億劫だったから、肩を寄せて傘にいれてもらった。



横を見れば、アカネの頬がほんのり赤い。


……あ、これ。
栗原ミキ
栗原ミキ
相合い傘……
口に出した途端、恥ずかしくなってしまった。
私まで赤くなってしまって、慌てて自分の傘をさす。
那津岡アカネ
那津岡アカネ
……ん
栗原ミキ
栗原ミキ
え、これ
アカネが私の鞄に何かをねじこんだ。
取り出してみれば、ミスターコンの前席チケットだった。

出場者が家族や身内に渡すために配られているとは聞いていたが。
那津岡アカネ
那津岡アカネ
別に、楽しまなければいいだろ
俺だけ見てればいい
那津岡アカネ
那津岡アカネ
俺を見るのは青春とは関係ないからな
なによ、それ。
栗原ミキ
栗原ミキ
変な理屈…
変だよ。
意味がわからない。

でも。
栗原ミキ
栗原ミキ
ありがとね。気遣ってくれて
那津岡アカネ
那津岡アカネ
……ミキ
最近、唐突だよね。
私はなによ?まだなにかあるの?と聞きながら、アカネの顔を見る。


悔しいくらいに整っているし、女子がキャーキャー言うのもわかる。

那津岡アカネ
那津岡アカネ
俺以外の前で泣くなよ
子供っぽい、泣き虫だ、って言われたような気がして、かっと顔が熱くなる。

アカネは私と違うもの。
お姉さんのことを引きずったりしていないし、もう前を向いている。
私はあんな風になれなかった。
栗原ミキ
栗原ミキ
……泣いてないから! 雨だから!
那津岡アカネ
那津岡アカネ
……ばーか
またバカって言った!
もう。アカネなんて知らない。
ふん、と鼻息荒く足を踏んでやる。


アカネは軽く避け、私にまたバカと言った。
ほんと、ムカつく。
そういえばこいつは、ずっと前からムカつくやつだった。