無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第5話

3 years ago
「いつものところで花火を見ましょ」


近所のお姉さんはとても優しかった。
浴衣がものすごく似合っていて、空を見上げるのが勿体ないくらいだった。

空よりも、お姉さんのほうが綺麗なのに。


川辺に腰をおろし、辺りを見回す。
屋台が立ち並び、ざわざわと人が動いていく。みんな、笑顔だ。

ふと、横を見ると。



アカネはリンゴ飴を食べていた。

「アカネ、ちょーだい」
「やだ」


さらっと断られて、私はむくれてしまう。

それを見て、お姉さんがコロコロ笑った。


「あ、ほら始まるよ」


ドーン、と花火が上がる。
大きな花火だ。

この近所の川辺で花火を見るのは何度目だろう。
毎年毎年、花火を見るし、家族ぐるみでのバーベキューや川遊びにも最適の場所だ。
私達はここが好きだった。


「そうだ、二人とも。今度あたしの学校の学園祭に来ない? きっと楽しいよ」
「「行く!」」


お姉さんに誘ってもらえて舞い上がった。






──学園祭なんて。

行かなければよかったのに。




行かなければ、私は。私達は。


『あの出来事』なんて経験しないですんだのに。
そのせいで、青春を楽しめなくなることだって、なかったのに。





──後悔しても、遅いのだ。





──






「チヅルくんてさ」
「かわいいんだから、もっとかわいい曲を聴きなよ」
「そうだよ。私達、チヅルくんがあんなのを聴いてたなんて知ってショックだったんだから」
「似合わないよ」



──『あんなの』は僕の。
一番大好きなものなのに。



「そうだね」



つまらない。
なにもかも、つまらない。



自分の求められたキャラを演じるだけなんて、つまらない。