第115話

え…、そっち!?
3,094
2021/09/20 10:48


〜菅原side〜




菅原「大地ーっ!1本ナイッサー!!」



大地のサーブが森然コートに入る。




と、一瞬間を溜めてから、森然は弾き出すように複数人のスパイカーが助走を始める。




またコレ……!?






子鹿野「今度はコッチだよっ!」




ピーッ



相手の主将にトスが上がり、これでゲームは森然高校に軍配が上がった。










澤村「フライング一周っ!!」


烏野「うぇーい…」




ペナルティをこなす最中も、やっぱりいつもの騒がしさや賑やかさがない。







谷地「あっ、菅原さん!ドリンクです!」


菅原「おー、谷地さんありがと。」




休憩中、他のコートに目を向けながらスポドリを飲む。


と、視線を感じて谷地さんの方を向けば、ソワソワしながら挙動不審な動きをしていて…




菅原「…谷地さん?どうかした?」


そう聞くと、「…なんか、皆さんこの頃元気ない…ですよね。」と控えめな声で言った。



菅原「…うん。俺も同じこと思ってた。」


谷地「やっぱり……あなたのあなたちゃんですか?」



あなたのあなたの名前が上がったことに、近くにいた大地や旭もピクっと肩が揺れた。




菅原「………だべな、」


自分でも声が暗くなるのがわかる。それほどにやはりショックが大きかったんだろう。




試合に勝てないのは、日向と影山の赤点遅刻組が欠けてるってこともあるけど、1番の原因はたぶんあなたのあなただ。





谷地「…あのっ、関係あるかわかんないんですけど、」


菅原「…ん?」


谷地「あなたのあなたちゃん、前に言ってたんです。“親の存在が自分の中で大きい”とか、“親が怖い”って…」




初耳だった。そんな話を谷地さんとしていたことじゃなくて、あなたのあなたが親とのことで悩んでいるという実態に。



谷地「…考えすぎかもですけど、もしかしたら退部もそのことが絡んでたり……」


月島「十分ありえると思うよ。」




そう、難しい顔をしながら月島が会話に口を挟んできた。




月島「水曜日、あなたのあなた 保健室に行ったんですけど、保護者に連絡するっていう先生に、必死でやめろって言ってましたし。」




あなたのあなたが…?



俺はそんな様子を想像もできなくて、近くにいた旭たちも同じような表情を浮かべていた。





澤村「…とりあえず、日向たちが来るまでに対応策や突破口を探り出す!あなたのあなたのことは、この東京遠征が終わってからだ!」



烏野「……うす!」





大地の主将らしい一言で場が締まる。



けど、誰もがあなたのあなたの親のことについて、心配したり考え込んでいるのは明らかだった。





























〜あなたのあなたside〜





あなたのあなた「お、及川さん……」



東京遠征1日目。烏野バレー部が東京へと飛び立っている間。




岩泉「クソ川、女子に絡むんじゃねぇって言ってんだろが。」


??「何なに?また及川ナンパしてんの?」


??「また彼女と別れたからだろ。」


??「え、誰情報それ。」


??「猛。及川の甥っ子。」


及川「はぁ!?なんでまっつんが猛から俺の恋愛事情聞いてんのさ!ってかあなたのあなたちゃんの前でそんな話するのやめて!恥ずかしい!」


岩泉「恥ずかしいって自覚あるんなら、コロコロ女変えてんじゃねぇぞ!ボケが!!」






…宮城にて、青城軍団に遭遇してしまいました。




え、会話に私関係ないし、帰っていいよね…?






??「あ。ってかこの子、大会の時に国見と話してた子じゃん。」


と、片方の黒髪の長身さんが(みんな長身だけど)私をじっと見てそう呟いた。



あなたのあなた「え、っと……?」


??「あぁ、俺は松川一静。3年ね。」


??「俺は花巻貴大。同じく3年ー。好物はシュークリーム。」


そう言って、ピンク髪の人はコンビニの袋からシュークリームを取りだし見せびらかす。



あ、そこの近くのコンビニに寄ってたのか…。





思えば、ここの辺りは青城の近くで、きっと及川さんたちは練習終わりなんだろうな…と考えていた。




名乗ってくれたその2人に私もペコッと頭を下げ、「…白布あなたのあなたです。」と挨拶した。





及川「あなたのあなたちゃんはなんでここに?」


あなたのあなた「あ、近くのスーパーに買い物に…」


そう言いながらスーパーの袋を前に出すと、そのまま袋の中を覗かれる。



及川「わぁ…!自分で作るの?」


あなたのあなた「…まぁ、一応ですけど。」


及川「あなたのあなたちゃんの作るご飯絶対美味しいよ、なんか…あなたのあなたちゃんって家庭的な女の子って感じしてたし!」



ニコニコ笑いながらそう褒められ、素直に嬉しがるのも恥ずかしいから「…ありがとうございます」とそっぽを向いてお礼を言うと、









ぐいっ





及川さんに覗かれていた方のスーパーの袋が私の手から離れて、片方の腕が軽くなる。






国見「……荷物、あなたのあなたの家まで持ってくから帰ろ。」



不機嫌な英がそう言いながら、袋を片手に持ち上げていた。





あなたのあなた「英…!え、いたんだ、全然気づかなかった。」


国見「…さっきまでコンビニの中にいたから。」



英の視線の先を見ると、同じ青城のジャージを身にまとった、らっきょのような頭をした人が出てくる。





あなたのあなた「や、でも英も練習終わりで疲れてるでしょ?早く帰ったほうが…」



国見「そういうお前のほうが元気ないじゃん。」




見抜かれていたことにびっくりするが、それが嬉しくて、ふっ…と自然に笑みが少し零れる。






あなたのあなた「そんなことないよ笑」



そう笑えたのは、さっきの英の言葉の安心感からか、無理して笑顔を作ったからか分からないけど…




そう笑って誤魔化した私を、疑うようにじっと見つめて離さない。




困ったな…。英って鋭いし、なんか隠してるってすぐにバレちゃいそう。






及川「じゃあ、及川さんと帰ろ!」



場を無視した一言に、「いや、空気読めよ」とベシッと軽くチョップされる及川さん。




及川「いいじゃん!国見ちゃんだって、さっき『早く帰りたい』ってずっとボヤいてたでしょ?だからここは及川さんにまっかせなさーい!」





すっかりゲンナリとした顔で及川さんを睨む英に、「国見ちゃん!顔怖いよっ」とわざと怖がる及川さん。













あなたのあなた「…じゃあ、よろしくお願いします。」






私の一言で、英をはじめ青城ジャージ姿の全員が固まった。








青城「……え?」



青城「え…、そっち!?国見じゃなくて、及川!?」









…そんなオーバーリアクション、及川さん以外にもされると収拾つかなくなるんですけど。

















プリ小説オーディオドラマ