モブ女子「ごめん!こっちお願い!!!」
モブ男子「おう、鍋持ってくぞ〜」
モブ女子「ねぇ!!あそこ見てよっ!料理出来てイケメンとかサイコーすぎん!?」
モブ女子「分かる〜!!」
耳に残る、みんなの楽しそうなざわめきを、何とか左耳に抜けさせようと試みるが、意識する程に声は集まってしまう。
……いいなぁ、楽しそう。
2日目の午前中。私は熱は下がったものの、ちょっと微熱が残っていたため、詩織と莉音から、「あなたのあなたは休んでて!!」と止められてしまった。
……逆にすることなくて、ぼーっとしてると熱が上がりそうなくらいなのに。
昨日の豪雨は名の通り、台風のようにあっという間に過ぎ去っていたため、今日は雲ひとつない清々しい青空だった。
みんなが水道場でカレーを作っている間に、私は1人バンガローの近くのベンチでその様子を眺めていた。
??「あれ、白布さん?」
先生の目をかいくぐりながら、スマホをいじっていると、あまり聞き覚えのない声が近くからした。
日向「あ、やっぱり!!白布さんじゃん!」
そこには、昨日の屈託ない明るい笑顔があった。
あなたのあなた「日向くん…!ってあれ?私名前教えてたっけ……?」
日向「いや、昨日会ったあと、班の奴から聞いた!けっこー有名人なんだな!!俺全然知らなかった笑」
あなたのあなた「そんな、有名人って程じゃないよ笑たぶん、新入生代表の言葉したからかな」
不思議。日向くんが笑って話しかけてくれると、私も自然に笑顔になって話せる気がする…
どうやって笑おうとか、相手にどう映ってるんだろうとか、そういう細かい所を気にせずに。
日向「で、何してたの??」
あなたのあなた「あー…みんなから待機命令出ちゃって、やること無くてぼーっとしてた笑」
日向「あ!昨日のやつか!!」
日向くんがどこまで知っているのか曖昧で分からなかったため、私は「んー、そうそう。」と対応した。
あなたのあなた「あ。それなら私、昨日の日向くんのジャージちょっと直したいんだけど、いい?」
日向「ええっ!さすがに悪いよっ!?」
予想外の言葉だったのか、目を大きく見開いて驚いた。
あなたのあなた「気にしないで。私やること無くて暇だから、むしろありがたい笑」
日向「ん、じゃお願いしゃーっす!!」
大きな声で頭をガバッと下げながらそう言うと、ダッシュで自分のバンガローへ向かった。
ほんとに純粋で真っ直ぐだな。根っからの体育会系とはまた少し違った感じ笑
その間に私もポーチに入ったミニソーイングセットを取りに行き、ベンチに戻るとちょうど日向くんも器用に水たまりを避けながら、こっちへ来ていた。
あなたのあなた「貸して。」
私は慣れた手つきで、ものの5分で破れた部分を縫い合わせる。日向くんは、ベンチの隣でその様子をじっと見ていた。
あなたのあなた「…よし!これでオッケー」
日向「すげ〜っ!!めっちゃ早ぇ!」
あなたのあなた「それ昨日も言ってたよ笑」
日向「白布さんってすげーんだなっ…」
あなたのあなた「はい、もう無理しないで、変な藪の中とか入ってったらダメだからね!」
日向「オッス!!」
??「おい日向、明日の練習だけどよ…って、誰だ?」
私に対して敬礼してくれてた日向くんの背後から、背が高くて目が切れ長な黒髪の男子が現れた。
_____日向くんとは正反対だな…。
日向「おう影山!!あ、この子月島と山口と同じクラスなんだって!白布さん!」
あなたのあなた「はじめまして、白布あなたのあなたって言います」
私は何十回と繰り返してきた、同じ様な笑い方と語尾で、影山くんに軽く会釈をした。
影山「ウッス。……影山飛雄、バレーやってます。」
その瞬間、私の中で何かがピクリと反応した。反応した“何か”は曖昧だったけど、
『バレー』っていう単語に反応したのは確かだった。
あなたのあなた「ってことは、日向くんもバレー部なんだ。」
日向「そうそう!こいつセッターでさ、んもうめっちゃすげえの!!」
相変わらずキラキラとした表情で褒める日向には、ある意味尊敬の意が出てくる。
どうしよ……、一応バレーに関わりあることぐらい言っといた方がいいかな?
迷いながら、ポケットの奥の‘’お守り”を確認しようと思って、ポケットに手を突っ込んでい________
………あれ、、…?
あなたのあなた「な、い……?」
『いいから、これ付けてて欲しいの!!』
私が押し付けるように渡したのに。
持ってて欲しいって言ったのは私なのに。
大事な大事な、、兄妹の印なのに………っ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。