賑わう廊下の人混みを掻き分けながら、私はただ走った。
……LINE送ったのに気づいてくれたらいいんだけど、
返信が来るまでじっとなんかしていられなくて、私は必死になって校内を彷徨った。
山口「あれ…白布さん、どこに________」
あなたのあなた「山口くん、ごめん!片付けには行くから!」
途中、階段ですれ違った山口くんと月島くんにそう言い残すと、私は走って昇降口の方を目指した。
校内これだけ探してもいないってことは……、
嫌な予感を抱えながら1階に降りると、見覚えのある茶髪の彼が、周りの人混みの中で頭1つ分上の位置に見えた。
その姿を見つけると、思わず安心して大声で呼び止めた。
あなたのあなた「っ…、川西くん!お兄ちゃん!」
周りの人がギョッとして私に視線を集めるけど、今はそんなことを気にすることなく、2人に突進していく。
白布「…あなたのあなた?」
私の声に気づいたのか、先にお兄ちゃんが私の方を振り返るのが人垣の間から見える。
あなたのあなた「はぁはぁ…やっと見つけた。」
息を切らした私を見て、お兄ちゃんはスマホを取り出すと、私の通知に今気づいたようで「ごめん、LINE気づかなくて」と謝った。
川西「そんな息切らして、何かあった?」
さっきの意地悪い表情とはうってかわり、心配そうに私の顔を覗き込む川西くんに「…大丈夫、」と応え、顔を上げた。
あなたのあなた「…お兄ちゃんに、話があって。」
白布「…とりあえず移動するか。」
周りが私たちに注目しているのを鬱陶しそうな目で見回すと、静かにそう告げる。
私もお兄ちゃんの言葉にコクンと頷くと、「なら、こっち来て」と2人を案内した。
文化祭も終盤に近づく中、私は裏庭のひっそりとした木陰のベンチへ案内して2人に腰掛けるよう促した。
…でも、いざ話すとなると何て言い出せばいいのか分からなくて、ふと思いついたのが天童さんの顔だった。
あなたのあなた「…さっき、天童さんたちに会ったよ。」
お兄ちゃんは「そ、」と素っ気なく、川西くんは「うげっ」と顔を顰めて哀れみの目を向けられた。
川西「ほら、お前が牛島さんにあなたのあなたの場所教えるから…」
あなたのあなた「いや、別に怒ってる訳じゃないんだけど…むしろ、おかげでスッキリした。」
私は大きく深く息を吸い込むと、息を吐き出してからお兄ちゃんの目をまっすぐ見つめた。
あなたのあなた「私、烏野のマネージャーやりたい。」
川西くんが「え、マジ…?」と呟く隣で、お兄ちゃんはフッと息を漏らして笑った。
白布「やっと決心着いたのか?」
あなたのあなた「え……、?」
お兄ちゃんが怒る訳でも、素っ気ない態度を取る訳でもなく、何故か優しく笑っていた。
白布「GWの合宿行った後、お前なんか悩んでたっぽかったし。…時々上の空になることも最近増えたし。」
あなたのあなた「ご、ごめ________」
白布「謝んなよ。…むしろ、なんか安心した。」
私の言葉を止めて、お兄ちゃんは遠くの空を見ながらそう言った。
あなたのあなた「安心…?」
白布「そ。あなたのあなたが自分の本心言ってくれて。…お前、すぐ“迷惑かけるから”とか言って我慢ばっかしてるだろ。」
「だから、」と言いかけて、何か考え込んでからお兄ちゃんは再び口を開いた。
白布「お前も、自分のやりたいようにやればいいんだよ。」
あなたのあなた「……っ、うん…っ!」
込み上げそうな涙を懸命に堪えながら、私は掠れた声で言葉を振り絞って大きく頷いた。
あなたのあなた「…ありがとう、お兄ちゃん。」
白布「…頑張れよ」
お兄ちゃんは立ち上がり、すれ違いざまにそう言うと同時に頭にポンと手を置いた。
その手はすぐに離れると、そのまま反対方向へ歩いていく。
振り返らないその後ろ姿を見つめていると、再びポンと頭を叩かれて、「頑張れよ、」と川西くんもそう言ってくれた。
あなたのあなた「うん…!ありがとう」
その言葉に、川西くんは私に振り返って手を振ってくれた。
白布「…太一、お前便乗すんな。」
川西「いいじゃん、1人だけカッコつけんなって笑」
白布「俺は兄貴だからいいんだよ。」
川西「…なら、俺は彼氏に立候補するかなー」
白布「は?」
_____なんか…川西くん、お兄ちゃんの逆鱗に触れてるっぽいけど、お兄ちゃんに何言ったんだろ…?
……………………………!作者より!…………………………
前回のコメ欄にて、次回予告を語ってくれたお方の展開通りになりましたね、はい。笑
ちゃんとしらぶんぶんの出番が来ましたよ〜っ!!
前回の終わり方が、誰を探しに行ったのか曖昧にしてたので、受け取り方によってはスガさんかなー…?と予想していた方もいらっしゃったかと笑
そんな方にも朗報です。次回は、なんと…なんと…っ!?
って思わせぶりなことする作者だから…ごめんね🙏
決してSじゃないよ!?どちらかというと、白布さんがドSだから私はM気質でありたi(((
時々、うっかりネタバレしちゃうかもだけど、極力しないよう心がけますので!( ̄^ ̄)ゞ
いや〜、にしても白鳥沢組がいい仕事してくれましたねー
牛島さんに「頑張れ」とか言われたら、めちゃくちゃやる気でるかもだけど、あんまり夢主ちゃんと絡ませてなかったし😓
天童さんに本心を悟られて、いつもの陽気な口調で励ましてもらいたかった、っていうのもあって、天童さんと瀬見さんに大半エールを送ってもらいました笑
大平さん…出番少なくてごめんなさい🙏
そして、作者の夏休みが終わってしまいました…。(話の展開急すぎね?と思った皆さん。作者も同じこと思った笑)
地域や学校によっては、コロナの影響で休みが伸びてる所もあるかと思いますが、(いいなー…( •̅_•̅ ))
作者、今日は国・数・英の課題テストで、火曜は生物のテストで、水曜は数Aと英語の2回目の課題テストがァァァ…😱
土曜日に漢検と河合塾の模試終わったばっかなのに…
学校始まって、どれぐらいのペースで更新できるか分かりませんが、気長に待っててね!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。