そして、合宿4日目は一日中バレー部の手伝いをして、最終日の5日目を迎えた。
今日の練習試合は烏野高校ではなく、少し離れた市民体育館で行われるらしい。
そのため、午前で調理部は活動終了となった。
真佳「あなたのあなたはどうするの?バレー部手伝いに行く?」
あなたのあなた「んー…まぁ、向こうの高校はマネージャーいなくて人手足りないらしいし、一応ね。」
結「頑張ってね〜!」
あなたのあなた「いや、頑張るのは選手だから笑」
そう騒ぐみんなと別れて、私は1人体育館へと向かう。
朝ご飯の片付けがあったため、選手たちとは同じ車に乗れなかったものの、市営のバスを経由し、遅れて到着する。
と、体育館の手前の茂みから、ニャーと1匹のかん高い鳴き声がした。
その鳴き声に引き寄せられるように近づくと、植木の下で丸くなっている1匹の猫。
大きさからしてもう子猫とは言えないけど、でもちょっとやせ細った首輪の無い猫で、
あなたのあなた「…………かわいいなぁ、」
思わずしゃがみこんで、その猫と目線の高さが同じくらいになるように、じっと様子を伺った。
猫は私と目が合うと、すがるように身をこすってきて、私の周りをくるっと回り出す。
何を思ったのか急に動きを止めると、その隙に私は猫の両脇を抱え、高い高いするように持ち上げた。
猫「ニャーっ」
その猫はほんとに大人しくて、こんなことをしてもされるがままで引っ掻いてもこない。緩みきった自分の頬に猫をスリスリと寄せると、猫の喉からゴロゴロ…と音がした。
あなたのあなた「もー、キミ可愛すぎるぞ〜っ」
離れたくなくなっちゃうじゃんっ、どーしてくれるんだ〜!? と頭をもふもふすると、自由気ままなその猫は、するりと私の腕を抜け出して、私の後ろの方へと一直線に進んでいく。
その猫の行き先に視線を向けると、見覚えのある赤いジャージに、ボブの金髪…
あなたのあなた「え……!?」
孤爪「………いい子。」
研磨さんは自分から寄ってきた猫を慣れた手つきで抱き上げ、自分のおでことスリスリさせる。
………ごめんなさい、男の子なのに可愛いと思ってしまって、大変失礼しました…
あなたのあなた「えーっと…、確か、研磨さん……ですよね?」
私は恐る恐るそう聞くと、「…うん、名前は合ってる。」とさっきよりもボソッとした声が聞こえてきた。
孤爪「……けど、誰だっけ。」
あなたのあなた「あ…この間ランニング中に日向くんと会った時、黒尾さんと一緒に________」
孤爪「あぁ………あの時の。」
研磨さんも思い出してくれたらしく、シワが寄っていた眉間がふっと緩んだ。
あなたのあなた「はい、……って、すみません名前馴れ馴れしく呼んじゃって…。もし宜しければお名前伺ってもいいですか?」
孤爪「…孤爪、研磨。音駒高校の2年………」
あなたのあなた「え、先輩…!?すみません、日向くんが呼び捨てでタメ口だったので、てっきり……」
慌てた私がそう弁解すると、孤爪さんは特に気にもしてない様子で、
孤爪「……別に、そうい堅苦しいの嫌だから。」
と、助け舟を出してくれる。
あなたのあなた「…なら良かったです、」
私がほっとして笑みをこぼしながらそう言うと、顔を少し曇らす孤爪さん。
孤爪「………敬語じゃなくていいから。」
あなたのあなた「え、でも…………」
無意識に出てくる敬語を直せるかな…と不安も抱えつつそう言いかけると、私が言い終わるのを待たずに、猫を地面に返してから無言で立ち去ろうとする。
あなたのあなた「あ、ちょっ………、わ、わかった!孤爪くん、……」
孤爪「………研磨、」
あなたのあなた「へ?」
なんだろ…?初めて会った時は、私と関わらないかのように距離を置いていたのに、今日の孤爪…いや、研磨くんはその時とまるで違う。
あなたのあなた「……うん。…研磨、くん……?」
疑問形になってしまった私の声に、「……うん」と言って、柔らかく微笑んだ……気がした。
……ごめんなさい。先輩なのに、やっぱり可愛いって思ってしまう私を許してください…、
〜孤爪side〜
コートの準備中。重いものも運びたくないし、物がどこにあるかも分からないことを言い訳に外に出た。
外はむさ苦しい体育館内とちがって、清々しい風が吹いていて、俺の髪を少し乱暴に乱す。
孤爪「あ……、」
あの子……、この間クロといた________
あの堅苦しい子だ、と直感が働く。極力近づかないようにしようと思って背を向けたのと同時に、
あなたのあなた「もー、キミ可愛すぎるぞ〜っ」
そう独り言を言って、無邪気に猫とじゃれつくあの子の姿が目から離れなかった。
……ほんとに同一人物?ゲームみたいな多重人格とか?
そんな俺の考えをよそに、あの子は純粋な笑顔で猫に笑いかける。
………あの子、あんな顔できたんだ。
堅苦しいのは苦手で、極力他人とも関わりたくない…。
けど、普段見せないであろうあの子の無邪気な姿は、そんな俺の基盤となっているものを崩すほど、俺の心を揺さぶった。
あなたのあなた「…研磨、くん……?」
君の俺を呼ぶその声は、他の何よりもスっと馴染んで俺の耳を通っていって、
再び真面目になった君の化けの皮を剥いでみたくて、
……もっと、君の無邪気なところを見てたい。
……この純粋さを、他の誰にも知られたくない。俺だけが独占したい。
…ゲーム以外にこんなに興味が湧いたのは、初めてかもしれない。
……………………………!作者より!…………………………
研磨くん、あなたのあなたちゃんにギャップ萌えしてしまいましたね〜( ̄∀ ̄)ニヤニヤ
逆にファンにギャップ萌えさせてるであろう、研磨くんをギャップ萌えで惚れさせてみたい、と思い立ったのがキッカケ笑
うん、ギャップって恐ろしい。皆さんもギャップでコロッと恋に落ちちゃうぐらいの恋、してくださいね。
え?作者は?って…、やだなぁもう〜(ノ∀`*)ノ))Å`)バシバシ
3次元にそんな恋ができないから、プリ小説にどっぷり浸かってるんですよ〜笑笑
うん、くれぐれもみんなは作者みたいにならないでね☆
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。