第185話

VS扇南
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2022/11/05 10:00


東峰先輩のサービスエースに始まり、烏野高校の初戦は怒涛の勢いで扇南と点差を突き放した。


東峰先輩や田中先輩の強烈なスパイクだけじゃなくて、月島くんのブロックや澤村先輩のレシーブもより完成している。




日向の鮮やかなブロードが決まると、ホイッスルの音が高らかに鳴り響く。



烏野「っしゃぁ!!」



得点板を見ると25-16という大差で第1セットを先取していた。




仁花「やったぁ!この調子なら大丈夫そうだね!」


あなたのあなた「みんないつも通りのプレーもできてるし、日向も最後のブロード良かったしね!」




私と仁花ちゃんは顔を見合わせて安心したように笑い、隣で優くんたちはさっきの日向の攻撃に目を輝かせていた。






「おいこら!静かになるな!」




と、その時相手コート側から大きな声が聞こえ、顔を向けるとちょうど目線の先、2階の応援ブースから身を乗り出して選手に声をかける人がいた。






「本気も必死も一生懸命も、カッコ悪くない!!」






その真っ直ぐな声と言葉に思い出す。



彼こそが、IHの試合で扇南の選手の中で誰よりも必死にプレーしていた主将であると。





選手たちはその言葉に感化されたのか、そのうちの1人、1番の選手がコートに歩いていくと大きく息を吸った。






「烏野を倒す!1次予選突破!打倒白鳥沢っ!!」




「はははっ!マジか言いよった!!」

「白鳥沢倒すってかー?やったろうじゃねぇか!!」




宣戦布告ともとれるその宣言に、チームメイトたちの士気も高まっていく。





「...本気出すぞ!お前ら!!」






チームの団結力、そして勝利への執念が高まっていくのを目の前に、仁花ちゃんは「なんか相手チームすごい...」と腕を震わせながら呟く。





私は自分の心の乱れを落ち着かせようと、大きく息を吸って吐いた。








あなたのあなた「扇南ーっ!!」






私が発した叫び声は相手校だけでなく会場のギャラリーたちの視線も集めた。



仁花ちゃんもアワアワとして「ちょっ...あなたのあなたちゃん!?」と私の腕を掴んでるけど、私の意識はもうそこにはなかった。






“1次予選突破”



“打倒白鳥沢”





それを目指してるのなんて私たちだって同じだ。








あなたのあなた「宣戦布告!2次予選に進んで白鳥沢を倒すのは...烏野なんだからーっ!!」







目を逸らすことなく真っ直ぐに突き刺した言葉。



すると、唖然として私を見つめる扇南たちの横、烏野側から「ぶっ...ははっ!」と笑い声が上がった。






西谷「ナイスすぎだぞあなたのあなたーっ!!」

田中「俺らのいいとこ全部あなたのあなたに持ってかれてんじゃんかよ〜っノヤっさん!」

日向「うぉぉお!!ウシワカジャパンも全部たおーっす!」





私と同様(?)叫び出す3人に苦笑を交える先輩たち。



それでも、みんなの目に闘志が燃え上がっているのは遠くからでも一目でわかった。




















〜菅原side〜



澤村「あなたのあなたに言わせるとか...カッコ決まらないな俺たち」


菅原「あなたのあなたがカッコよすぎて反則だっての!」


東峰「俺は...割と初めからあなたのあなたのこと真面目にカッコイイって思ってたから、その時の感慨深さが蘇ってくるな...」




目の前の西谷たちの騒ぎに呆れて笑ってしまいながら、しみじみと俺たちはそんな会話をする。






俺たちが勝つことを信じて疑わず、不良らしい見た目の相手にも臆さず堂々と言い放つ度胸が頼もしくて...嬉しくて、自然と口角が上がる。


















『...やっぱり、応援するなら強いチームがいいって、そう思っちゃったんです。』




『お兄ちゃんは凄く努力して、強豪校の正セッターになった。...そんなお兄ちゃんを尊敬してるし、やっぱり支えたいって思ったの。』









つい1ヶ月前のあなたのあなたの言葉が脳裏をよぎる。




あなたのあなたが突然退部した時、彼女を追いかけて、話ができると思った瞬間突きつけられた事実。








...これがあなたのあなたの本心なのかどうかは、今となってもわからないままだけど、とりあえず今はそんなことどうでもいい。











あなたのあなたがまた烏野で一緒にバレーしたいって思ってくれた時、内心どこかまだ不安を抱えていた。



それはたぶん、俺だけじゃなくて大地も旭も。






“次の大会、俺たちにとっては最後の大会、春高の舞台でもしあなたのあなたの兄がいるチームと戦うことになったら...あなたのあなたは迷うんじゃないか”って。









ずっと応援してきた兄と自分のチームと、どちらかが勝つためにはどちらかを選ばなくちゃならない。






わかってはいたけど...俺はこの事に目を逸らしていたんだ。












だけど今、あなたのあなたが叫んだ決意は、俺たちの心配や不安なんていとも簡単に吹き飛ばしてしまったから。








もう躊躇うものは何もない。










菅原「思いっきりいけよ!お前ら!」





バシッと強く2人分の背中を叩くと、大地と旭は頼もしい顔でそれに応えた。














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