〜あなたのあなたside〜
澤村「おーい。ちゃんと帰ってからも勉強するんだぞー、特に赤点ギリギリの奴。」
部活終わり、澤村先輩の一言で日向くん、影山くん、田中先輩、西谷先輩の4人が肩を震わす。
私はというと、さっき仁花ちゃんから「手伝ってほしい」と頼まれたのを思い出し、1人嬉しさから笑みを零していた。
…仁花ちゃんと上手くやれるか心配だったけど、頼ってくれて素直に嬉しいなぁ……。
そんなことを考えていると、「あ、そうだ…あなたのあなたー。」と声をかけられた。
あなたのあなた「どうかしましたか、?」
澤村「いや、あなたのあなたに言わなきゃなんない事思い出して。」
澤村先輩はそう言って話し出すと、次第に私の瞳がキラキラと輝いていくのが自分でもわかる。
あなたのあなた「え…!期末終わったら遠征あるんですか!?」
澤村「そうそう。急で悪いんだけど…行けそうか?」
あなたのあなた「帰って聞いてみます!」
澤村先輩の話によれば、夏休み入ってすぐにも東京合宿が7日間あるらしく、今年の夏は楽しくなりそう…!と期待で胸を膨らませていた。
澤村「…そういやあなたのあなたは進学クラスだよな。」
あなたのあなた「?…はい、1年4組で月島くんたちと同じです。」
澤村「なら、大丈夫だと思うけど…。実はな____」
菅原「赤点取ったら、東京には連れて行けないって武田先生に言われてんだよなー…」
澤村先輩の言いかけた言葉に被せるように、後ろから出てきた菅原先輩がそう言った。
赤点、か…
あなたのあなた「……赤点って、何点からなんですか?」
純粋に疑問に思った私がそう聞くと、先輩たちの顔がみるみる青ざめていく。
東峰「え……。日向と同じこと言ってる…」
澤村「あなたのあなた、お前まさか……!」
余計に頭に?マークを浮かべた私に、そう迫る先輩たち。
山口「あっ、大丈夫ですよ。あなたのあなたちゃんいつもテストでツッキーよりも上位ですから!」
月島「山口うるさい。」
あなたのあなた「ちょっ、山口くん…ハードル上げないでよ…汗」
突然現れた山口くんがサラッと告げると、月島くんと私の声がハモる。
その山口くんの言葉に、先輩たちは安心したような表情を浮かべた、…と思ったら、瞬間目を見開いて「月島より上位!?」と驚いたように叫んだ。
月島「……何か悪いですか?」
東峰「いやいやいや!そんなことないぞ、月島。」
澤村「あなたのあなたがそんなに頭良いとは思ってもみなかった…」
あなたのあなた「…私、地味にディスられてる?」
山口「いや…そんなことはないと思うけど……」
収拾がつかなくなったこの空間に、澤村先輩が手をパンパンと叩くと自然に先輩に視線が集まる。
澤村「まぁ、ならあなたのあなたの心配する必要はなさそうだから…。もし余力があれば、悪いけど日向と影山の面倒も見てやってくれないか…?」
「アイツらバカだけど、あの4人がいなくちゃ戦力が著しくダウンするのも事実だからな…」と呆れながら呟く姿は、もはやお父さんさながらで。
「分かりました。」と、私も苦笑しながら答えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!