第102話

赤点…とは。
3,047
2021/09/11 00:06



〜あなたのあなたside〜



澤村「おーい。ちゃんと帰ってからも勉強するんだぞー、特に赤点ギリギリの奴。」



部活終わり、澤村先輩の一言で日向くん、影山くん、田中先輩、西谷先輩の4人が肩を震わす。





私はというと、さっき仁花ちゃんから「手伝ってほしい」と頼まれたのを思い出し、1人嬉しさから笑みを零していた。




…仁花ちゃんと上手くやれるか心配だったけど、頼ってくれて素直に嬉しいなぁ……。





そんなことを考えていると、「あ、そうだ…あなたのあなたー。」と声をかけられた。



あなたのあなた「どうかしましたか、?」



澤村「いや、あなたのあなたに言わなきゃなんない事思い出して。」




澤村先輩はそう言って話し出すと、次第に私の瞳がキラキラと輝いていくのが自分でもわかる。






あなたのあなた「え…!期末終わったら遠征あるんですか!?」


澤村「そうそう。急で悪いんだけど…行けそうか?」


あなたのあなた「帰って聞いてみます!」



澤村先輩の話によれば、夏休み入ってすぐにも東京合宿が7日間あるらしく、今年の夏は楽しくなりそう…!と期待で胸を膨らませていた。




澤村「…そういやあなたのあなたは進学クラスだよな。」


あなたのあなた「?…はい、1年4組で月島くんたちと同じです。」



澤村「なら、大丈夫だと思うけど…。実はな____」




菅原「赤点取ったら、東京には連れて行けないって武田先生に言われてんだよなー…」



澤村先輩の言いかけた言葉に被せるように、後ろから出てきた菅原先輩がそう言った。




赤点、か…




あなたのあなた「……赤点って、何点からなんですか?」


純粋に疑問に思った私がそう聞くと、先輩たちの顔がみるみる青ざめていく。



東峰「え……。日向と同じこと言ってる…」


澤村「あなたのあなた、お前まさか……!」



余計に頭に?マークを浮かべた私に、そう迫る先輩たち。




山口「あっ、大丈夫ですよ。あなたのあなたちゃんいつもテストでツッキーよりも上位ですから!」



月島「山口うるさい。」


あなたのあなた「ちょっ、山口くん…ハードル上げないでよ…汗」




突然現れた山口くんがサラッと告げると、月島くんと私の声がハモる。




その山口くんの言葉に、先輩たちは安心したような表情を浮かべた、…と思ったら、瞬間目を見開いて「月島より上位!?」と驚いたように叫んだ。




月島「……何か悪いですか?」


東峰「いやいやいや!そんなことないぞ、月島。」


澤村「あなたのあなたがそんなに頭良いとは思ってもみなかった…」


あなたのあなた「…私、地味にディスられてる?」


山口「いや…そんなことはないと思うけど……」





収拾がつかなくなったこの空間に、澤村先輩が手をパンパンと叩くと自然に先輩に視線が集まる。



澤村「まぁ、ならあなたのあなたの心配する必要はなさそうだから…。もし余力があれば、悪いけど日向と影山の面倒も見てやってくれないか…?」




「アイツらバカだけど、あの4人がいなくちゃ戦力が著しくダウンするのも事実だからな…」と呆れながら呟く姿は、もはやお父さんさながらで。




「分かりました。」と、私も苦笑しながら答えた。



















詩織「へぇ…じゃあ、あなたのあなたは2人の勉強監督係に任命されたと。」


あなたのあなた「いや、私の他にも月島くんとかマネ候補の子とかも教えてくれてるらしくて。私の出る幕ほとんどないかと…」





文化祭が終わってからは、詩織と莉音とランチタイムをゆっくり過ごせるようになり、お喋りが弾む。



2人にバレー部のマネージャーやるって報告した時は、特に莉音に「なんで事後報告なの!?」って怒られたな…笑








莉音「って、噂をすれば…あの子、文化祭のときあなたのあなたに話しかけてたバレー部の子じゃん。あのオレンジの子!」


莉音が指さす先には、月島くんの机の前で必死になって頭を下げる日向くんの姿が。横には影山くんもいる。



詩織「あ、ほんとだ。」


あなたのあなた「あぁ…、きっと勉強教えてって頼みに来たんだろうな。」




けど、月島くんめちゃくちゃ不機嫌そうだし…。仁花ちゃんとかに頼みに行かなかったのかな…?


私が3人の行く末をじーっと見守っていると、詩織が苦笑して、「行ってきてあげたら?」と言った。



あなたのあなた「…え、でも……」


詩織「さっき言ってたじゃん。勉強教えてあげるのもマネージャーの仕事でしょ?」



詩織に「ほら、行った行った!」と空のお弁当箱を取り上げられ、背中を押された。



莉音「いってら〜笑」


振り返ると、莉音も莉音でなんか楽しんでるように手をヒラヒラと振ってきた。







…まぁ、2人が良いって言ってくれてるし、私も遠征で2人の速攻見たいし。




2人に心の中で感謝をしながら、私は自分の席…つまり、月島くんの隣の席へと向かった。














プリ小説オーディオドラマ