第61話

番外編.2 : 誕生日当日
4,413
2021/07/30 22:10



ペットボトルを抱えて部屋の前に戻ると、両手が塞がっていて、どうやってドアを開けようかと一瞬悩む。



…インターホンがある訳でもあるまいし、呼んだところで多分出てこないだろうな。(え、ヒドッ!by天童)




そう思って俺は、片腕と身体の間に全部のペットボトルを抱いて、ドアを開ける。














パァンっ!!








白布「……は…?」



部員「HAPPY BIRTHDAY!白布!!」






天童さんをはじめとして主に先輩たちが、俺の反応を伺うようにニヤニヤしている。




白布「や、…なんですかこれ、」


天童「なんだよ〜もっと驚けよ〜!!」


白布「いや、こんなの急にやられても……」


瀬見「こんなんじゃ、あなたのあなたもつまんねぇな〜って思ってるぞー」


瀬見さんはそう言いながら、スマホの画面を俺に向けてくる。と、そこに映っていたのは________



白布「あなたのあなたっ!?」


あなたのあなた「お兄ちゃん、さっきより今の方がびっくりしてるよ〜笑」



テレビ電話になっているのか、スマホの中から「おーい」と言って手を振るあなたのあなたがいた。



大平「なんだ。結局あなたのあなたちゃんの登場が1番のサプライズかよ笑」


どこからどうツッコんでいいのか、よく分からなくて、とりあえず五色に視線を向けると、五色は「なんで俺ばっか睨むんですか!?」と叫んだ。



白布「睨んでるつもりないけど、」


牛島「天童が、合宿中に白布の誕生日パーティーのサプライズをしたいと言い出してな。」


牛島さんがそう言うと、「いや、賢二郎の誕生日って気づいたの、若利くんじゃんっ」と牛島さんを軽く叩く。



天童「で、あなたのあなたちゃんとグルになって、部屋のセッティング中、賢二郎を寄せ付けないようにしてたって訳!」


白布「……そうなんですか、」


天童「ってことで!とりあえず鍛冶くんにバレない程度にお菓子パーティーするかぁ〜」


瀬見「あ、あとプレゼントあったよな笑」


瀬見さんと天童さんが何か企んでそうに顔を寄せ合う。その今まで見たこともないような光景に、身震いすると、天童さんが自分のバックから、1枚の封筒を取り出した。


________この人のバック、何でも入ってんな…




そんなことを考えていると、天童さんは中から手紙を取り出し、「んじゃ、俺読むよ〜」と言い出した。



天童「『お兄ちゃんへ
いつも、一緒にいてくれてありがとう!
お兄ちゃんが美味しいって言ってくれるの、
すっごく嬉s________』」



あなたのあなた「ちょっと天童さん!代読なんて聞いてないですよっ!?…恥ずかしいです、///」


スマホの中のあなたのあなたが、赤面になってそう叫ぶ。


瀬見「おい、天童。あなたのあなた困ってんじゃん。」


天童「えー、でも賢二郎だけ内容知ってるとか、なんかヤダ」


白布「俺宛の手紙なんですから、それでいいじゃないですか。」


天童「2人だけの秘密みたいでなんかヤダなんだヨ〜!ね、若利くんも2人の兄妹の話の内容気になるよね?」


牛島「……俺はどちらでもいい。」


牛島さんは配慮してくれたんだろうけど、なんか俺に興味の欠片もないみたいにも受け取られ、少々イラッとした。


白布「…じゃあ、あなたのあなたが読めばいいだろ。」


あなたのあなた「え、私読むの確定なの?」




少々不満げなあなたのあなたの顔を覆うように、スマホに瀬見さんが手紙を見せると、スピーカーにした声が少し曇りながら聞こえ出す。




あなたのあなた「『お兄ちゃんが美味しいって言ってくれるの、すっごく嬉しいです。
これからも、お兄ちゃんのバレー応援してるから、お兄ちゃんのこと、ずっとサポートさせてね!
     あなたのあなたより』」




天童「え〜、封筒の割には内容短くない?」


天童さんは口をアヒルみたいに尖らせながらブーブー言うと、牛島さんが「天童。人には踏み込まれたくない部分があるものだ。」とフォローに入ってくれる。



あなたのあなた「…じゃあ瀬見さん、それ今ここでお兄ちゃんに渡してください!」


瀬見「お、おう……?なんか、凄い圧がある気が…」


白布「コイツ、怒ると相当怖いですよ。……まぁ、滅多にないですけど。」




瀬見さんは画面のあなたのあなたに促されるまま、手紙を俺に手渡す。



白布「……ありがとうな、あなたのあなた。」


あなたのあなた「うん!」





1年「……え、白布さんって妹にあんな優しいの?」


1年「あんなに雰囲気柔らかい白布さん、初めて見る……」




天童「ちょっとちょっとー、賢二郎!妹ちゃんとイチャつかないの〜!!」


白布「別にイチャついてませんけど。」


瀬見「ったく…恐ろしいな。白布兄妹2人が揃うと」











俺の誕生日当日の夜は、そんな賑やかな雰囲気で…正直言うと、騒がしいぐらいだった(主に天童さん)。















あなたのあなた「お兄ちゃん、おかえり〜」



5日間の合宿が終わり、家に着いたのはもう夜だったが、あなたのあなたはテンション高めで玄関まで出迎えにくる。



白布「ただいま。」


あなたのあなた「合宿どうだった?楽しかった?」


白布「……まぁ、楽しかった、か。」


あなたのあなた「…ねぇ、ちょっと先こっち来て!」



そう言われ、あなたのあなたに引っ張っられてリビングに入ると、そこは風船や壁飾りやらに囲まれてカラフルになっていて、





あなたのあなた「お兄ちゃん、改めてお誕生日おめでとう!これからもよろしくね!」



あなたのあなたは笑顔で俺に、ラッピングされた箱を手渡す。



白布「…香水?」


あなたのあなた「そう、お兄ちゃんたまに付けてるでしょ?」


「匂いがイマイチだったら全然いいんだけど…」と遠慮がちに言うあなたのあなたに、「いや、ありがと。」とお礼を言って、目線をダイニングの机に向ける。



そこもまた、パーティー会場みたいに華やかで、ケーキやらキッシュやらで溢れていて…



……コイツだって、今日合宿終わったばっかだよな…?





白布「……ありがとな。嬉しかった。」



俺がそう言って頭を優しく撫でると、あなたのあなたは頬を少し染めながら満面の笑みで笑った。



白布「けど、無茶だけはすんなよ。お前だって今日疲れてるだろ…?」




……一応そう注意するけど、それで実行できた試しはない。




あなたのあなた「…うん、分かった。」






そう返事をしたあなたのあなたは、いつもより沈んでいて……






帰ってきて無駄にテンションが高かったのは、サプライズもあったろうけど、






………多分、合宿でバレー部の奴らとなんかあったんだろうな。














正直、ずっと俺を…白鳥沢を応援してほしいと、心の底では思ってしまう。




でも、コイツはそもそも、バレーが好きな奴だから。


じゃなかったら、中学の時マネージャーなんかやってない。







………あなたのあなたには、ただ楽しんで、いつもみたく夢中になって、バレーを見ていてほしい。





だから、もしその居場所が白鳥沢じゃないのなら……








あなたのあなた「お兄ちゃん、先ご飯食べちゃおー」



あなたのあなたが明るくそう言って、キッチンへ向かう。







……いや、今日は考えるのやめとこう。合宿で疲れてるし。




白布「…あぁ。」







俺はそう返事して、5日ぶりにあなたのあなたと2人で食卓についた。











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