ペットボトルを抱えて部屋の前に戻ると、両手が塞がっていて、どうやってドアを開けようかと一瞬悩む。
…インターホンがある訳でもあるまいし、呼んだところで多分出てこないだろうな。(え、ヒドッ!by天童)
そう思って俺は、片腕と身体の間に全部のペットボトルを抱いて、ドアを開ける。
パァンっ!!
白布「……は…?」
部員「HAPPY BIRTHDAY!白布!!」
天童さんをはじめとして主に先輩たちが、俺の反応を伺うようにニヤニヤしている。
白布「や、…なんですかこれ、」
天童「なんだよ〜もっと驚けよ〜!!」
白布「いや、こんなの急にやられても……」
瀬見「こんなんじゃ、あなたのあなたもつまんねぇな〜って思ってるぞー」
瀬見さんはそう言いながら、スマホの画面を俺に向けてくる。と、そこに映っていたのは________
白布「あなたのあなたっ!?」
あなたのあなた「お兄ちゃん、さっきより今の方がびっくりしてるよ〜笑」
テレビ電話になっているのか、スマホの中から「おーい」と言って手を振るあなたのあなたがいた。
大平「なんだ。結局あなたのあなたちゃんの登場が1番のサプライズかよ笑」
どこからどうツッコんでいいのか、よく分からなくて、とりあえず五色に視線を向けると、五色は「なんで俺ばっか睨むんですか!?」と叫んだ。
白布「睨んでるつもりないけど、」
牛島「天童が、合宿中に白布の誕生日パーティーのサプライズをしたいと言い出してな。」
牛島さんがそう言うと、「いや、賢二郎の誕生日って気づいたの、若利くんじゃんっ」と牛島さんを軽く叩く。
天童「で、あなたのあなたちゃんとグルになって、部屋のセッティング中、賢二郎を寄せ付けないようにしてたって訳!」
白布「……そうなんですか、」
天童「ってことで!とりあえず鍛冶くんにバレない程度にお菓子パーティーするかぁ〜」
瀬見「あ、あとプレゼントあったよな笑」
瀬見さんと天童さんが何か企んでそうに顔を寄せ合う。その今まで見たこともないような光景に、身震いすると、天童さんが自分のバックから、1枚の封筒を取り出した。
________この人のバック、何でも入ってんな…
そんなことを考えていると、天童さんは中から手紙を取り出し、「んじゃ、俺読むよ〜」と言い出した。
天童「『お兄ちゃんへ
いつも、一緒にいてくれてありがとう!
お兄ちゃんが美味しいって言ってくれるの、
すっごく嬉s________』」
あなたのあなた「ちょっと天童さん!代読なんて聞いてないですよっ!?…恥ずかしいです、///」
スマホの中のあなたのあなたが、赤面になってそう叫ぶ。
瀬見「おい、天童。あなたのあなた困ってんじゃん。」
天童「えー、でも賢二郎だけ内容知ってるとか、なんかヤダ」
白布「俺宛の手紙なんですから、それでいいじゃないですか。」
天童「2人だけの秘密みたいでなんかヤダなんだヨ〜!ね、若利くんも2人の兄妹の話の内容気になるよね?」
牛島「……俺はどちらでもいい。」
牛島さんは配慮してくれたんだろうけど、なんか俺に興味の欠片もないみたいにも受け取られ、少々イラッとした。
白布「…じゃあ、あなたのあなたが読めばいいだろ。」
あなたのあなた「え、私読むの確定なの?」
少々不満げなあなたのあなたの顔を覆うように、スマホに瀬見さんが手紙を見せると、スピーカーにした声が少し曇りながら聞こえ出す。
あなたのあなた「『お兄ちゃんが美味しいって言ってくれるの、すっごく嬉しいです。
これからも、お兄ちゃんのバレー応援してるから、お兄ちゃんのこと、ずっとサポートさせてね!
あなたのあなたより』」
天童「え〜、封筒の割には内容短くない?」
天童さんは口をアヒルみたいに尖らせながらブーブー言うと、牛島さんが「天童。人には踏み込まれたくない部分があるものだ。」とフォローに入ってくれる。
あなたのあなた「…じゃあ瀬見さん、それ今ここでお兄ちゃんに渡してください!」
瀬見「お、おう……?なんか、凄い圧がある気が…」
白布「コイツ、怒ると相当怖いですよ。……まぁ、滅多にないですけど。」
瀬見さんは画面のあなたのあなたに促されるまま、手紙を俺に手渡す。
白布「……ありがとうな、あなたのあなた。」
あなたのあなた「うん!」
1年「……え、白布さんって妹にあんな優しいの?」
1年「あんなに雰囲気柔らかい白布さん、初めて見る……」
天童「ちょっとちょっとー、賢二郎!妹ちゃんとイチャつかないの〜!!」
白布「別にイチャついてませんけど。」
瀬見「ったく…恐ろしいな。白布兄妹2人が揃うと」
俺の誕生日当日の夜は、そんな賑やかな雰囲気で…正直言うと、騒がしいぐらいだった(主に天童さん)。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。