第108話

待ってらんないかも。
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2021/09/14 22:27




私は、武田先生に退部届を渡したその足で教室に戻った。





ガラッ






莉音「あれ…、あなたのあなたおはよーっ。部活は?」


詩織「朝練抜けてきたの?」




不思議そうな顔で私にそう尋ねる2人に「ううん、今日はもう上がったの。」と答える。




莉音「どこか体調悪いの…!?」


あなたのあなた「違う違う笑…体調は悪くないし、心配しなくても大丈夫だよ。」




そう誤魔化した私に、詩織は「…何かあった?」と優しく聞いてくれる。




体調悪くないのに抜けてきたって言ったから、逆に心配させちゃったのか……。





あなたのあなた「何もないよ。ごめん、ちょっと着替えてくるね。」



笑顔を貼り付けてそう言うと、私は制服を持って更衣室に向かおうと廊下へと向かう。












莉音「……んなわけあるか、、」




莉音のボソッと呟く声が背中に刺さり、私の足が止まる。





詩織「莉音…?」



莉音「っ…なんもなかったらそんな顔しとらんやろ!?」




急に大声で怒鳴った莉音に、教室中の視線が集まる。





その目は、次第に莉音が怒鳴った相手…つまり私へと移っていった。







莉音「…なんで、何も言ってくれへんの?…っなんで困ってる時に頼ってくれへんの!?」




私の様子がおかしいことに、莉音が気づいていたことにも私は驚き、…こんなにも今まで我慢させてしまったことに罪悪感を覚えた。







あなたのあなた「………ごめん。」



莉音「別に謝ってほしいんちゃう!うちが聞きたいのは…」








あなたのあなた「……ほっといてよ、私のことなんか。」










私の独り言が、莉音の言葉をとめた。





さっきまでマシンガンのように私に怒っていた莉音は、急に黙り状態になって、詩織はそんな私たちを宥める。




詩織「ちょっ…2人とも落ち着いて……!」




莉音「……ふぅん、ならもうええわ。」




莉音の冷たい声に、心臓が冷えていく感覚が私を襲う。







莉音「せやったら、もうあなたのあなたのことなんか心配せえへん。自分がそうして欲しいんやろ?」





あなたのあなた「……………」






莉音の言葉に何も答えられないでいると、「…信じとったうちがアホやったわ。」と吐き捨てて、教室を出ていった。




詩織はそんな私と莉音に交互に視線を向け、慌てていて…






詩織「…ごめん、あなたのあなた。けど、莉音は本気であなたのあなたのこと心配してたんだよ?それは分かってあげて…!」




私にそう言い残すと、「莉音待って!」と叫びながら廊下を走っていった。










男子「え、なに…喧嘩?」


「西尾、やっぱ怒ると怖ぇ〜…」


女子「何なに、なんかあったの?」


「莉音と白布さんが揉めてたっぽくて…」






教室中がザワザワとうるさくなり、私は自分の居心地の悪さを感じた。






手に持っていた制服のワイシャツをぎゅっ…と握りしめ、私は教室から静かに出ていった。




























〜詩織side〜





詩織「莉音、待ってってば!」



階段を降りる莉音を見つけ、背中から呼び止める。





莉音「……詩織。」







……知ってる、この莉音。





莉音はさっきとは別人のように静かな、…震えた声で私の名前を呼んだ。





私が莉音の真正面に追いつくと、背中をそっと撫でる。





莉音「……あたし、何がいけなかったのかな…?あなたのあなたの力になりたかっただけなのに…。」





莉音は私にぎゅっとしがみつき、子供みたいにしゃくりをあげて泣いた。




私の制服に莉音の涙の染みが広がって、そんな莉音の頭を優しくポンポンと触れる。











……知ってるよ。莉音が本気で怒る時は、相手を想ってるからだって。




莉音は、友情とか友達関係を人一倍大切に思っている分、あなたのあなたに「ほっといて」と言われたことがショックだったんだろう…。







莉音「…詩織、」



詩織「ん…?」





莉音はぎゅっと力を込めて私を抱きつくと、弱々しい声で呟いた。










莉音「……あたしも、もうお利口に待ってらんないかも。」








それは、以前私が口にした言葉。

















『私、そんなお利口に待ってらんない…』



『だから、あたしたちがあなたのあなたが心開いてくれるまで頑張んないと!』





あの時、莉音は弱気になった私を明るく励ましてくれた。












『……信じて待とう。あなたのあなたが私たちを必要としてくれるまで。』






きっと、莉音のその言葉は、今までずっと自分に言い聞かせてきた言葉だったんだろう…。







人一倍あなたのあなたを想って待っていたからこそ、莉音にはもう限界がきていた、我慢できなくなっていた。











詩織「…莉音は充分待ったよ。あとはあなたのあなたに任せよ…?ね?」






莉音「………うん、」









莉音はコクっと頷き、静かに鼻をすすった。














_____あなたのあなた、いつでも頼ってよ。




______私たち、友達でしょ…?






























……………………………!作者より!…………………………







昨日、9月14日でこの作品を書き始めてから、ちょうど4ヶ月となりました〜!!






以前、11月までにお目目ちゃん50000いけるように頑張ります!と宣言していましたが、既に超えてた…😭







いつも読んでくださり、本当にありがとうございます!







最近は本編がシリアス続きで、続きを読みたいような見たくないような…という葛藤(?)があるかもしれませんが、






早くこの展開が終わってくれることを願って、私もどんどん更新していきたいと思います…!





目標は1日1話更新!…できるといいなぁ😅












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