第33話

次の約束
5,708
2021/06/26 05:00


及川「ほんとに送ってかなくて大丈夫?」



駅前の広場にて、心配そうに及川さんは私の顔を覗く。



半日前は、まさかここでナンパされた人と過ごすなんて思ってもみなかっただろうな…




あなたのあなた「平気です、行きも1人でしたし。」


及川さん「んーでも、あなたのあなたちゃん可愛いから、また変な男に絡まれちゃうよ?」


あなたのあなた「かっ、可愛いって…///!______っ私にとっては、ナンパする人=変な男にもなり得ますよ!!」



及川「顔、真っ赤になってるよ笑」


あなたのあなた「なっ、なってませんからっ…!!」


及川「ふっ…笑なんか、こんな風に女の子と話すの初めてかも」




及川さんは素で楽しそうに目を細めていた。





あなたのあなた「そりゃあファンの方々と一緒にされたら困りますっ」


及川「さすがに失礼すぎない!?」




あなたのあなた「……そうじゃなくて、」



私はそこで一旦間を置くと、思い出すように遠い目をしながら告げた。





あなたのあなた「…及川さんのファンの人たちにも、もっとバレーを知って貰えたら……、表面上だけじゃない及川さんのカッコ良さに気づけると思うんですけど。」





及川「……それって、あなたのあなたちゃんもカッコ良いって思ってくれてるってこと?」




思いがけない言葉に、思わず及川さんの顔を凝視すると、及川さんは真剣な表情に優しい笑みを浮かべていた。





今日1日過ごして、この顔には嘘偽りがないことに気づけたから…、



あなたのあなた「…及川さんは実力も充分あって、陰で凄く努力してるんだろな…って、そういう、バレーに対する情熱とか一途さは、チャラチャラしてなくていいなって思います。」


私も自分の気持ちを正直に伝えた。




及川「そっか…、」



及川さんの顔は辺りの夕焼けで、ほんのり赤く染まっていて、



及川「…ありがとうね」



小さな感謝が及川さんの口から零れた。






そして、一瞬で切り替えたように、いつもの女の子へ向ける用の笑顔を及川さんは浮かべて、


及川「そうだ、LINE交換しよっ」




……さっきまでチャラくなくて、好印象だったのに。




あなたのあなた「そんな、今日初めて話したような人とLINE交換なんて______」



及川「そのお兄ちゃんへの誕プレ作戦の結果も聞きたいし。何よりあなたのあなたちゃんともっと話してみたいから。」




……マズイ、このまま及川さんの目を見てたら、確実にペース持ってかれる…!!




そんな危険信号が心の中で鳴り響いて、


あなたのあなた「…じゃあせめて、今度のIH予選で会えたら報告しますから!」




「今日はほんとにありがとうございました!」と慌てて頭を一瞬下げると、ダッシュで改札口へと向かった。
















〜及川side〜


………あなたのあなたちゃん、絶対分かってないよね?



『今度のIH予選で会えたら報告しますから!』





及川「……何気に次に会う約束したようなもんじゃん…///」







最初はただ、可愛い子だなって思って近づいた。



けど、他の子たちのような反応はなく、むしろ冷たすぎないっ!?ってぐらいな程で。




そんな風に女の子と話すのは新鮮で楽しくて




けど、からかうとすぐ顔を赤らめて、


そういう所が可愛いって思っちゃったんだよね……





きっと、あの子の隣にいられるだけで、ずっと楽しいんだろうなぁ。実際、今日は半日が経つのがあっという間で……、



こんなに時間を短く感じたのは、バレー以外で初めてかもしれない。







及川「______欲しいな…///」




次はLINE交換出来るように頑張ろっと。











〜あなたのあなたside〜



白布「…ただいま」


あなたのあなた「お兄ちゃんおかえり〜」



練習から帰ってきたお兄ちゃんを玄関まで迎えに行くと、さすがに疲労を帯びた目をしていた。




あなたのあなた「お疲れ様!練習試合どうだった?」


白布「どうもこうも、勝つに決まってるだろ。特に今日は牛島さんの調子も良かったし」


あなたのあなた「じゃあお兄ちゃんも大活躍だったね!牛島さんが相手から1番意識させられてたんなら…!」




お兄ちゃんの“1番カッコイイバレー”が出来たのなら…




白布「…あぁ」



お兄ちゃん以上に喜んで少しはしゃぐ私を見て、ふっと息をこぼすように柔らかく笑った。





お兄ちゃんがバックを肩に掛け直して、私の横を通り過ぎようとしたとき、



お兄ちゃんはピタッと足を止めた。



あなたのあなた「お兄ちゃん?」



お兄ちゃんは探るように1回鼻をひくつらせると、私の首元を注視した。




そして、お兄ちゃんの顔が私の顔のすぐ右下に近づき_______




スンっ





白布「……お前、香水なんて付けてたっけ?」




顔を離すと、お兄ちゃんは私の目をじっと見て口を開いた。




あなたのあなた「あ…お兄ちゃんが使ってるの見て、ちょっと買ってみたいなって思って」


白布「…ふーん。……香水って、リラックスしたり、気分変えたいときに使うとかもできるし、まぁ…いいんじゃねぇの」


あなたのあなた「!うん、ありがとう……!」




私の笑った顔を確認すると、お兄ちゃんは2段ほど階段を上る。



私も夕ご飯の続きを作ろうとリビングのドアを開けると、上から「……なぁ、」とお兄ちゃんが話しかける声が聞こえた。




あなたのあなた「何かあった?」



白布「…さっきの、極力外で付けるなって意味だけど。……ちゃんと分かってんの?」




いや、そんなの一言も言われてないんで分かんないでしょ……




あなたのあなた「いや……、」



私が言葉を濁すと、お兄ちゃんは真顔のまま思いがけないことを言い放った。



白布「変な虫が寄ってくるから。」


あなたのあなた「あ…うん、わかった!」




白布「…………。(……ほんとに分かってんのか?)」





なんか、お兄ちゃんがじとーっと見てるけども…。





まぁ、香水の匂いって虫寄ってくるって教えてもらえたから、気をつけよっと。














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ここまであなたのあなたちゃん鈍感にしていいのかわかんなかったけど…笑





ま、あなたのあなたちゃんはあんまり恋愛に免疫なさそうって、作者の勝手な偏見によってここまで鈍感になってしまった……(あなたのあなたちゃん、すまんの🙏)






これで及川さんとのデート編おしまいっ!!!




次からは久しぶりに学校生活に戻るよ〜





次回、さっそく新キャラ登場!!!!





お見逃しなく〜〜〜





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