〜日向side〜
影山「おい日向、谷地さんのとこ行かなくていいのかよ。」
昼休みになって、いつの間にかクラスに来ていた影山にそう言われた。
期末テストの英語(影山は現代文)で赤点を取った俺たちは、今週末の補習を即行で終わらせられるように谷地さんに再び勉強を教えてもらっていた。
日向「あ…おう、行くに決まってる!」
そう宣言して立ち上がり、弁当を持つと影山を追って廊下に出る。
先に廊下に出ていた影山は、自分から言っといたくせに谷地さんのクラスと反対方向に歩いていっていた。
日向「おい!谷地さんのクラスはこっち______」
影山「先にぐんぐん牛乳買ってからだボケェ!」
日向「そこでボケェ言う必要あんのか!?」
お目当ての自販機に辿り着いた影山を待っていると、後ろから「日向、」と声をかけられた。
日向「キャプテン…!菅原さんと旭さんも!ちわっす!」
菅原「おお〜日向は元気だなぁ…笑」
日向「キャプテンも、ぐんぐん牛乳買いに来たんですか?」
俺がそう聞くと、キャプテンは笑いながら「いや、別にそれを買いに来たんじゃなくて…」と言いつつも、だんだん口ごもっていった。
そんなキャプテンの横から出てきた菅原さんに聞かれる。
菅原「日向たちは……、あなたのあなたのこと見なかった?」
日向「…もしかして、あなたのあなたを探してるんですか?」
そう聞くと、菅原さんは静かに頷いて「教室も行ったんだけど、月島たちも知らないって言ってたし…」
東峰「山口も凄い落ち込んでたな…、あなたのあなたに冷たくされてショックだったらしくて。」
俺は朝練の時の先生の話を思い出し、また自分の中に悔しさが襲ってきた。
……あなたのあなたもバレー大好きなはずなのに。なのに1人で辞めるって決めて、バレー部の誰もそのことを相談してもらえなくて…
あなたのあなたは今、何を考えてるんだろ…、?
日向「俺も探します!俺も、あなたのあなたとちゃんと話したいです。」
後ろから不思議そうな顔でぐんぐん牛乳を飲む影山に、少し苛立ちながら「おい影山、お前も来いよ!」と言っておく。
影山「?何にだよ、?」
日向「あなたのあなた探すんだよ!探して、会ってちゃんと退部の理由聞こう…!」
そう言って、まだ状況を分かってない影山を無理やり引っ張って行った。
同じクラスの女子から “屋上に行ってた” と教わり、その足で屋上へと向かう。
日向「あなたのあなた…。」
あなたのあなたは1人、屋上の片隅でお弁当を食べていて、俺と目が合うと少し驚いたような顔をした。
澤村「…あなたのあなた、話してくれないか…?」
キャプテンの言葉を受けて、少しの間の後
あなたのあなた「…ほんとは話すつもりなかったんですけど。」
そう話し始めるあなたのあなたの姿に、俺は少し安堵する。
______良かった、ちゃんと理由話してくれる…。
そう思ったのもつかの間、
あなたのあなた「…やっぱり、応援するなら強いチームがいいって、そう思っちゃったんです。」
あなたのあなたの発した一言が、俺…だけじゃなく先輩たちにもきっと、何かが心にズシンときた。
〜あなたのあなたside〜
分かってる。自分でも最低なこと言ってるって。
…それでも、バレー部のみんなが退部した私の存在を気にしなくても済むようになるんなら、私は___
私は、バレー部のために出来る最後のことをやりきるんだ。
そう決意して、私は大きく息を吸い込み、日向くんたちの目をまっすぐに見た。
あなたのあなた「…菅原先輩には話しましたけど、私…他校にバレー部の選手の兄がいるんです。」
日向くんをはじめ、その場の全員が驚いたように固まる。
菅原「けど、それはあなたのあなたが烏野のバレー部に入る上で、気にしてたことじゃ…」
事情を知っている菅原先輩は、私にそう聞く。
あなたのあなた「…そうでしたけど、今は違います。この2週間近くマネージャーやらせてもらって、…“兄の学校の方が強いな”って思っちゃったんです。」
私は借りてきた猫のように大人しい影山くんに視線を向けると、彼の負けず嫌いな性格を思い出して言葉を向けた。
あなたのあなた「実は、私のお兄ちゃんもセッターなの。影山くんほど精密でピンポイントなトスは上げられないけど…」
“セッター”という言葉に影山くんがソワソワしたのが分かる。私はそんな影山くんに火をつけるように言った。
あなたのあなた「お兄ちゃんも速攻で攻めてくスタイルだった。でも今はそんな華やかなプレースタイルへの憧れも捨てて、自分の信念のために全く別方向のバレーを選んだ。」
あなたのあなた「お兄ちゃんは凄く努力して、強豪校の正セッターになった。…そんなお兄ちゃんを尊敬してるし、やっぱり支えたいって思ったの。」
その言葉は…影山くんだけじゃなくて同じくセッターの菅原先輩にも届いていたようで、
2人は別の悔しさを抱えながら、私の話に耳を傾けてくれているように思えた。
話を静かに聞いていた先輩たちも、もう口出しすることなく、ただその場に沈黙が流れた。
あなたのあなた「…自分勝手なのは分かってます。皆さんに失礼だってことも。…でもやっぱり、応援するなら強いチームを応援したいんです。」
追い討ちをかけるように、私は先輩たちにそう告げる。
「…だから、ごめんなさい」と頭を下げると、食べかけのお弁当を無理やりバックに詰め込んで、その場に立ち上がる。
屋上の出入口へと向かった私を、誰も呼び止めなかったことに安心と寂しさを覚えつつ、私は屋上を出た。
屋上のドアを閉め階段を降りていると、ポタポタと頬に涙が伝っていくのを自覚した。
あなたのあなた「…っ、ごめんなさい……っ」
誰にも届くことのない言葉は、無機質な屋上階段の踊り場の空気に消えていった。
…けど、こう言い放つことで、みんなが私のことを未練なく放っておいてくれるのなら。みんなが悔しさから私を見返そうと思って、烏野が強くなってくれるのなら…、
最後にみんなの手助けができてよかった。…そうに言い聞かせてるのに、いつまで経っても涙は止まってくれなかった。
……………………………!作者より!…………………………
毎日投稿できたらいいなと呟いたはいいものの、2日間放ってしまってすみませんでした…😓
明日はもともと学校がある日でしたが、台風の影響(正しくは、台風に伴う雨雲の影響)で臨時休校になりました〜!(\( ˆoˆ)/\(ˆoˆ )/ワーイ)
ってことで、今年のシルバーウィークは勉強とプリ小説に全てを費やします。まぁ、勉強の配分の方が多くなりそうだけど…
漢検の次は英検も受けるし、来月すぐ中間テストだし、なんなら来月模試あるし。
(作者より!のコーナー、なんか勉強の愚痴るコーナーに変わっててごめんね😅 基本、スルーで大丈夫だよ笑)
皆さんも、勉強の息抜きに夢小説楽しんでね〜!…なんて言える展開じゃないから、なんかごめんね…笑
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!