第11話

雨の日の記憶
8,082
2021/05/23 01:01

ちょうどこんな日だった。






前日に、お風呂上がりでしっかり髪の毛を乾かさなくて





風邪で学校を休んだ私を、お母さんが看病してくれて





私の部屋には、雷の音が響き、熱と恐怖に侵されていた。





怖くて、怖くて、怖くて……





だから、お母さんが薬局に買い物に行くって聞いて、必死で引き止めた。「雷危ないから」とか、「私、元気だしっ」って、意地を張って怖いことを隠して。






でも、お母さんはお母さんだった。「あなたのあなたがちゃんと乾かさなかったからでしょ。」ってちょっとしかめっ面で言って、私の手を離した。







『行ってきます』








それが、最後に聞いたお母さんの声だった。








私が、強がってないで、「怖い」って言ってれば良かったのかなぁ?





髪の毛ちゃんと乾かしとけば、こんな事にならなかったのに……





最後ぐらい、怒った顔じゃなくて、優しく笑った顔が見たかった。




なんで、私の大切な人は、みんな私から離れてっちゃうの……?







私がダメな子だから?






迷惑かけてばっかだから?






足でまといになるだけだから?








…………だったらもう、大切な人なんか、いらない。

















??「……ぇ、…ちょっと、起きなよ……ねぇっ」






誰かが、呼んでる………?




私は重い瞼をゆっくりと開くと、うっすらと人影が見えた。





だ、れ……………?




その人は、私と目が合うと、すぐにその場から離れようと腰を上げた。








……待って…っ






行っちゃ、ダメなの……







「1人にしないで……っ」








「置いてかないで……っ」






「ちゃんと、、、ちゃんといい子でいるから…」







あの日、離されたお母さんの右腕





行っちゃダメっ……





私は今度こそ、ギュッと強く、掴んで離すまいと、















『……大丈夫、』







そういって、誰かが私の頭をぎこちなく撫でた。








その慣れない手つきは、お母さんには程遠いけど、







冷たくて、優しいその手のひらは、









身を預けてしまいたいほど信頼できる________優しい何かだった。






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