ちょうどこんな日だった。
前日に、お風呂上がりでしっかり髪の毛を乾かさなくて
風邪で学校を休んだ私を、お母さんが看病してくれて
私の部屋には、雷の音が響き、熱と恐怖に侵されていた。
怖くて、怖くて、怖くて……
だから、お母さんが薬局に買い物に行くって聞いて、必死で引き止めた。「雷危ないから」とか、「私、元気だしっ」って、意地を張って怖いことを隠して。
でも、お母さんはお母さんだった。「あなたのあなたがちゃんと乾かさなかったからでしょ。」ってちょっとしかめっ面で言って、私の手を離した。
『行ってきます』
それが、最後に聞いたお母さんの声だった。
私が、強がってないで、「怖い」って言ってれば良かったのかなぁ?
髪の毛ちゃんと乾かしとけば、こんな事にならなかったのに……
最後ぐらい、怒った顔じゃなくて、優しく笑った顔が見たかった。
なんで、私の大切な人は、みんな私から離れてっちゃうの……?
私がダメな子だから?
迷惑かけてばっかだから?
足でまといになるだけだから?
…………だったらもう、大切な人なんか、いらない。
??「……ぇ、…ちょっと、起きなよ……ねぇっ」
誰かが、呼んでる………?
私は重い瞼をゆっくりと開くと、うっすらと人影が見えた。
だ、れ……………?
その人は、私と目が合うと、すぐにその場から離れようと腰を上げた。
……待って…っ
行っちゃ、ダメなの……
「1人にしないで……っ」
「置いてかないで……っ」
「ちゃんと、、、ちゃんといい子でいるから…」
あの日、離されたお母さんの右腕
行っちゃダメっ……
私は今度こそ、ギュッと強く、掴んで離すまいと、
『……大丈夫、』
そういって、誰かが私の頭をぎこちなく撫でた。
その慣れない手つきは、お母さんには程遠いけど、
冷たくて、優しいその手のひらは、
身を預けてしまいたいほど信頼できる________優しい何かだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。