第116話

急なデレ発動
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2021/09/20 20:40


あなたのあなた「… なんで言い出しっぺが1番驚いてるんですか。」



その場の青城部員が全員オーバーリアクションをするから、私がツッコミを入れる羽目になる。




及川「だって、冗談のつもりで……まさかいいって言ってくれるとは思ってなかったから✨」


あなたのあなた「冗談ならいいです。1人で帰ります。」


及川「待って待って!一緒に帰るから!!」




焦ったようにそう言うと、英が持っていた袋を奪い、なにやら耳元に囁いていった。



その声はきっと他の人にも聞こえてなくて…




だから、その後英がほんの少し悔しそうに顔を歪めた理由も、私には分からなかった。

















〜国見side〜



あなたのあなた「…じゃあ、よろしくお願いします。」





俺は、あなたのあなたの告げたその言葉が信じられなかった。



嬉しそうな表情の及川さん、あからさまに俺と目を合わせないあなたのあなた、


2人にイラつきながら俺は抗議しようと、口を開きかけると





及川「…悪く思わないでね、国見ちゃん。」


耳元で、さっきまでギャーギャーと騒いでいた人とは思えないほど、別人のように大人びた声でそう言われた。









……なんで俺じゃなくて及川さんなんだよ。



……なんで俺には何もさせてくれないんだよ。








『そんなことないよ笑』


俺が「元気ないじゃん」って言った言葉に対して、笑いながらそう言ったあなたのあなた。





……そんな顔どこで覚えてきたんだよ。内側の本音を見せないように、笑顔で覆い隠すような…そんな笑い方。



昔は俺が声掛けたら泣き出して抱きついてきてたのに…。






昔の頃のあなたのあなたとは違うって、前から理解はしてたつもりだったけど、



こんなの、あなたのあなたじゃないじゃん…







今のあなたのあなたには、あの頃の無邪気な笑顔なんてものは、何一つ残っていなかった。







……それが俺には寂しくて、悔しくて。







金田一「く、国見…?どうした?顔ヤバいけど……」



国見「なんでもない」




金田一の言葉を軽く流すと、及川さんがあなたのあなたと歩いていく後ろ姿を見つめる。






袋を失い、一気に軽くなった腕は虚しくて、


握りしめる対象がなくなった手のひらは、ギリッ…と爪の食い込む痛みだけが残った。





















〜あなたのあなたside〜




結局、家の近くまで送ってもらい、途中の路地で私は足を止める。




あなたのあなた「じゃあ、この辺りなので。」


「ありがとうございました」と、袋を受け取ろうとすると、




及川「ね、ここでちょっとお喋りしない?」



微笑みながら、及川さんはそう言った。





あなたのあなた「お肉類買ったので、すぐ帰んなきゃですし…」


及川「1分だけでいいから!ね!」



両手合わせて頼まれて、「…じゃあ、そこの土手でいいですか。」と了承をとってから、渋々私は芝生に座り込んだ。





その隣に及川さんが座る気配がしたと思えば、瞬間及川さんの腕が私の腰の辺りに回された。




…けど、私が抵抗せずにされるがままだったのはふわっと香水の香りが私の身を包んだから。









あ…、この香り。



あなたのあなた「…お揃いのですか?」


及川「そ。あれから毎日付けててさ〜」


あなたのあなた「及川さんにも、あの香り気に入ってもらえたなら何よりですけど。」


及川「気に入ったっていうのもあるけど、これ付けてたら毎日あなたのあなたちゃんと一緒にいれる気がして!」


あなたのあなた「……またあの人に怒られますよ、同じチームのエースの方。」


及川「あぁ、岩ちゃんね〜。…って岩ちゃんにチクるのだけは勘弁!本気で殴ったり蹴ったりしてきて怖いからっ」


あなたのあなた「…岩泉さんと連絡先交換しとけば良かった。」


及川「ちょっとあなたのあなたちゃん!?」






及川さんに抱きしめられながらも、私たちは割と自然にお喋りをしていた。










…こういう時、及川さんとのこんな意味のない、たわいも無い会話が一番気が楽。




そう気づかせてくれたから、私はお礼といってはなんだが、いつもだったら抵抗するようなこの状況を許していた。










及川「……あなたのあなたちゃん。さすがに嫌がってくれないと、及川さんの心臓が持たないんですけど。」





そういう及川さんの掠れた声は、いつもより余裕がなくて



触れ合う部分から、トクントクン…と小さく心音が聞こえてきた。








あなたのあなた「…悔しいですけど、この匂い落ち着くので……このままがいいです。」









私は、もっと香水の匂いを嗅ぎたくなって、ポスッと及川さんの胸に頭を押し当てた。



























……………………………!作者より!…………………………






無自覚&天然(?)、恐るべし……。



『落ち着くから』って、匂い嗅ぎたいからって…そんな異性のくっつくかフツー!?



え、夢主ちゃんの甘えた可愛いかよ。デレ可愛いかよ。




夢主ちゃん、基本及川さんだけ・・には塩対応って言うか…ツンツンだったから、その分ギャップヤバイよね。絶対今心の中わーわー叫んでるよね笑








及川さん!頑張って堪えて!手出しちゃだめだよ!!






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