第186話

中学ぶりの
1,132
2022/11/13 09:00


ピピーッ



最後のラリーは相手もこのゲーム中イチの粘りを見せ、白熱した試合になった。





それでも最後の日向と影山くんの速攻が決まり、25-13というストレート勝ちで初戦の幕は閉じた。






仁花「やった!勝った?勝ったー!!」


優「すごーい!」



隣で2人も飛び上がって喜び、倫太郎くんも目を輝かせる。






これが……白鳥沢を倒すため、全国に進むための一歩目。



まだまだ先の道のりは長いけど、それでもまずは目の前の一勝に私も心から喜んだ。







仁花「あ!私たちみんなと合流した方がいいよね?」


あなたのあなた「そうだね、2人とも応援来てくれてありがとう」



仁花ちゃんの言葉に頷き、応援に来てくれた2人ににっこりと感謝を伝えると、2人とも楽しそうな表情をしていた。


振り返って烏養監督とその隣にいたおじさんに軽く頭を下げて、私たちは下へと降りていった。






日向「あなたのあなたー!谷地さーん!!」


仁花「日向おめでとーっ!」



ハイタッチを交わす2人に微笑ましく思いながら烏野のみんなと合流し、私もそれぞれ声をかけられる。



田中「あなたのあなた、後半始まる前のアレ!めちゃくちゃカッコよかったじゃねぇか!!」


あなたのあなた「いや…今思い出すとあんな大声で叫んだりして……恥ずかしいです」


西谷「なるほどな!そんだけ夢中だったってことか!」


あなたのあなた「もうやめてください…っ」




羞恥心で消え入りそうになりながら両手で顔を覆うと、「まーまー」となだめる声が私の背中をそっと押した。




菅原「でもあのおかげでみんな気合い入ったんだからさ、ありがとなーっ」


あなたのあなた「す、菅原先輩……っ」




その仏…いや天使のような優しさに、思わず目頭がじわりと熱くなる。


今の私は何故かこんなにも単純で、先輩の一言で恥ずかしいという気持ちよりも“みんなの力になれたことの嬉しさ”が遥かに勝った。









と、菅原先輩の肩越しにバチッと視線が合わさる。



私がこっちを見たことに気づくと、『やべっ』とでもいいそうな表情でギクリと微動した。





以前は毎日見ていた、久しぶりに見るその姿。




私は菅原先輩の横をするりと抜けると、ゆっくりながらもしっかりとした足取りでその人の前へ向かう。






??「アー……なんか悪いな、」





「むしろ邪魔しないつもりだったんだけど」と申し訳なさそうに呟くけど、その表情は以前と変わらない笑みを浮かべていて、自然と心がほっと落ち着くのを感じた。







「久しぶりだなあなたのあなた」


あなたのあなた「兼谷先輩も、お元気そうでなによりです」










『白布!今日もトスキレッキレじゃんっ!』


『さっすが白布!俺らのことよくわかってんじゃん!そんだけ大好きか〜……っててて!ちょっ、そんなつねらなくたっていいだろ!!』






中学時代、兄の隣でいつもみんなを明るく照らしてくれていた、チームのムードメーカーである兼谷先輩。




卒業して以来だから、実に1年半ぶりくらいだろうか…


その持ち前の明るさは健在で、こうして懐かしい笑みを目の前にして私も自然と笑みが浮かんだ。




するとそんな私を見て目をまん丸にする先輩。



兼谷「お、お前……、もしかして彼氏でもできた?」

あなたのあなた「会って早々言う一言目がそれですかっていうかいませんし」

兼谷「それそれ!やっぱそーゆー厳しい感じがあなたのあなただよなぁ〜久しぶりっ」

あなたのあなた「……先輩も相変わらずのマイペースですね」



呆れてため息が出てしまいそうになるが、そんな私の言葉に慣れている先輩は特に気にする様子もなくニコニコと笑っている。





澤村「他校の……あなたのあなたの知り合い?」


あなたのあなた「あ。すみません、こんな場で話し込んじゃって」




私は兼谷先輩を横目でちらっと見ると、頭の上にはてなマークを浮かべる烏野のみんなに振り返った。





あなたのあなた「えっと、中学の時のバレー部の先輩で、お兄ちゃんと同級生だった……」



兼谷「どもーっあなたのあなたの元先輩で翠川高2年の兼谷です!」




みんなの反応はそこまで大きなものじゃなかったけど、夏休み前にあった私の家の騒動もあってか、目を開いたり息をこぼしたりとそれなりにあった。





菅原「中学の時の先輩、」


日向「あなたのあなたのお兄さんの同級生……」



兼谷「…あなたのあなた、お前白布のこと話してんの?」


あなたのあなた「そ、そうですけど…何か問題でも?」




からかわれるのか何か告げ口されるのか、内心むっとしながら返答を待つと、予想外の言葉を放たれる。






兼谷「そっか。なら白布とも上手くいってんだな、ちょっと安心したわ。」






「白布って言葉少ないしすぐキレるし、高校別になってからどうかな〜って思ってたからさ」と悪びれもなくお兄ちゃんへの悪意混じりに先輩は語る。






瞬間、脳内に映り出す中学時代のたくさんの出来事。



その大半がお兄ちゃん絡みで、その度に衝突したり不仲になりかけたりして、




だからこそ兼谷先輩の明るい言葉やお兄ちゃんへのサポートが、今の私たちの仲を形成しているといっても過言ではないと思うから。





あなたのあなた「……はい、本当におかげさまで」




感謝の意の言葉はすんなり出てきた。





兼谷「良かった〜!さっきあなたのあなたが他校の応援してて、しかも“白鳥沢ぶっ倒す宣言”してるの聞いちゃったから正直ビビったわ」


あなたのあなた「……あれ聞いてたんですか、」



菅原先輩の一言と予期せぬ再会で上手く忘れられていたのに、今の一瞬で再び羞恥心が沸き上がる。






兼谷「動画も撮ったけど白布に送ってもいい?」


あなたのあなた「ちょっ……絶対ダメ!!」









前言撤回。やっぱり感謝の意なんて簡単に示したらつけあがるんだ…そう易々と言ってやるもんか。










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○兼谷先輩…通称“かねやん”


アニメ3期の白布くんの過去回想にて出てきた、中学時代のチームメイトです!名前は公式で出てないので捏造です!





かねやん先輩のイメージは明るいムードメーカー。お調子者というかマイペースな所があって周りを巻き込むのが得意(?)



だけどちゃんと周りも見れるタイプで、特に夢主と白布との関係性のことは人一倍気にしていていた。





かねやん先輩を前にして我を忘れると精神年齢低くなる夢主ちゃんが作者のお気に入り✌️





……だんだんと私が書きたかった展開に近づいてきたよ、ニヤニヤ






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