第3話

兄、初登場の巻
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2021/05/14 20:11



あなた「ただいま〜」







夕日の差し込んだ、誰もいない静かな家に、そう告げた。…まあ、もう慣れっこなんだけどね。





リビングに、スクバと買い物袋をドサッと下ろすと、制服の上からエプロンを着用。



即刻、2階のベランダへと向かうのだった。










ジュ〜っ


フライパンから、良い音と香ばしい香りが漂ってくる。スマホと格闘すること15分、今日のメニューは豚肉の生姜焼きに決まった。



お兄ちゃんも、1年生入部してきて、疲れてるだろうし…、生姜パワーで、少しでも元気に!!



あとは、豚肩ロースじゃなくて、豚バラ肉を使って、脂肪分を減らしたっていうのも、ちょっとした工夫。お兄ちゃんは気づかないだろうけど。









白布「ただいま」




あなた「おかえりーっ」




お兄ちゃんは、白鳥沢高校のバレー部のレギュラーだから、練習も遅くまでやっている。毎日お腹ペコペコになるまでボールを追いかける兄は、純粋に凄いと思うし、中学からずっと応援している。



白布「今日の夕飯、結局何になった?」



あなた「生姜焼き!今日ちょうどキャベツも安かったから」



白布「また今日もスーパー寄ったのか、毎日は大変だからいいって……」



あなた「ダメダメ!!その日の方が新鮮で安い食材が調達できるの!!!」



白布「…まぁ、ご飯については、あなたが係だもんな。ちょっと着替えて来るから待ってろ。」



あなた「はーい」



お兄ちゃんが2階にいる間に、私は散らかったリビングを整理し始めた。








白布「お待たせ……って、何だよ、こんなに荷物広げて。」



あなた「あぁ、ごめん!明日の宿泊研修の準備」



白布「確か、キャンプ場に行くんだよな」



あなた「そうそう。写真いっぱい撮ってくるねー」



白布「スマホ一応禁止なんだろ。あんまり人前でいじるなよ」



あなた「分かってるよ!……それと、さ。…お兄ちゃん、くれぐれも朝ごはんと夕ご飯は、ちゃんと食べてよ。」



白布「飯ぐらい、一応自分で作れるから。」




お兄ちゃんはそう言うと、「ご飯冷めるぞ」とスタスタと椅子へ向かい、座った。






2人「いただきます。」






カチャカチャと、食器を置く音、ご飯をかき込む音などが、キッチンに響き渡る。



2人でのご飯は静かだけど、居心地は決して悪くない。そういう部分が、お兄ちゃんと一緒に居やすい所でもある。






白布「明日の出る時間は、いつもと同じぐらいか?」




あなた「うん。お兄ちゃんは明日も朝練でしょ。多分、いつも通り私が家出るの最後だから、研修に家鍵持ってっちゃうね。」




白布「管理、気をつけろよ。」




あなた「はーい。」




白布「それで、……結局、あなたは部活どうするんだよ。」





不意な質問に、すこしばかりか驚き、思わず箸の手を止めて、お兄ちゃんをまじまじと見た。





お兄ちゃんは、私の様子を伺うように、さりげなく、でも耳をすまして私の返答を待っているように思えた。





あなた「んー。今のところは、帰宅部か調理部かなって思ってる。」



白布「烏野、調理部なんてあるんだな。」



あなた「公立だからってナメてちゃだめだよ〜笑」




白布「別に、ナメてはないから笑」


珍しくお兄ちゃんの顔がフッと緩んだ。私の顔を見て、ホッとするような、小馬鹿にされたような…。





そんな気がした。

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