第188話

角川戦決着
1,078
2022/12/12 10:59

ピピーッ


バコンッ!




試合開始早々、角川の9番のスパイクが3枚ブロックの上から叩き下ろされる。



「マジかよ……」

「あれじゃあブロックの意味ねぇじゃん」




次のポイントは西谷先輩がクロスのスパイクを乱れながらも上げてみせ、田中先輩が二段トスで日向に繋ぐ



……が、またもや角川の9番の高いブロックに阻まれ、得点は2ポイント連続で角川へと入ってしまう。





ちらりと横を向けば仁花ちゃんが不安そうにコートを見つめ、手元の手すりをぎゅうっと握りしめている。






ざわざわと騒がしくなる背後のギャラリーたち。


烏養元監督と話していたおじさんと、そのお知り合いの女子中学のバレー部顧問という女性との会話を耳で流しながら、私はそっとコートの選手たちを見た。







____見極めろ


コートに立つことができずとも、私も選手たちと戦いたい。




私は研磨くんから何を学んだ?

関東の強豪校たちとの試合から何を得た?




自分も戦えることを証明するんだ








仁花「…ちゃん?………あなたのあなたちゃんっ!」


あなたのあなた「!」





隣から肩をぽんぽんと叩かれ、はっと我に返る。



さっきまでコートに向けられていた心配の色を浮かべた視線のその先は、いつの間にか私へと変わっていた。






仁花「大丈夫?何回呼んでも気づかなかったみたいだけど…っ、はっ!も、もしやどこか具合が悪いとか!?」


あなたのあなた「ちょっ、私は大丈夫!仁花ちゃんの方が真っ青になってるからっ」






焦ったまま私の肩をがしっと掴む仁花ちゃんを、心配された張本人の私が必死に落ち着かせる。



集中すると周りが見えなくなっちゃうなぁ…と反省しながら、逆に緊張の抜けた仁花ちゃんと私たちの奇行を眺めて首を傾げていた優くんたちとで試合観戦を続けた。









バコンッ




「よっしゃー!」

「ナイスキーっ!!」






……やっぱり。



角川の2回戦を見ていて、随分わかりやすい ・ ・ ・ ・ ・ ・モーションだと感じていたけど、おそらくあの9番はコースの打ち分けが苦手なんだ。


ストレートの本数も少ないし、それも苦手意識が若干あるんだろう。




2mという恵まれた体格を持ちながらも技術は覚束無いなんて、バレーを始めたてとしか考えられない。



そうなればレシーブもサーブもきっと未熟もいいところだ。






……そして、きっとそれは先輩たちも見抜いていることで、










バコンッ




「うおぉぉぉお!!」

「出たーっ!超速攻!!」




2回連続で西谷先輩が9番のクロスをきっちり上げた直後、影山くんの手から弾き出されたトスが一瞬で叩きつけられる。





まだ決定率がそれほど高くないはずの新しい速攻を、ここで成功させるとは…。




一気に響いた歓声とどよめきの中、冷静な脳内とは反対に胸の内から沸き上がる高揚を自覚した。















〜仁花side〜



笑っている



…いや、笑っているのがおかしいわけでも珍しいわけでもないんだけど、


それでも1番に出てきた感想がそんな単純な一言になってしまうほど、初めて見たその微笑にどきっとした。




猫のように狙いを定めたまっすぐな眼差しをコートに向けていながら、きゅっと結ばれていた口の端が微かに上げられたその表情。


余裕の微笑みというか、その大人っぽさが垣間見える横顔に、何かいけないものでも見たような罪悪感を私は一瞬抱いてしまった。





あなたのあなたちゃんの目には今、何が映ってるのかな…。







ピッ



そんなことに気を取られていたけど、烏野側から上がった歓声ではっと意識が戻る。




日向と影山くんの新しい速攻はミスなくどんどん決まっていく。


そしてさらに、烏野の新しい攻撃であるシンクロ攻撃によって点差を開いていき________






ピピーッ





最初こそははらはらしたものの、振り返ってみれば2-0のストレートで烏野は勝利を収めた。





仁花「やったー!フジクジラいなくても勝てた…!!」




ほっと安心したと同時に私の本音も零れていた。




倫太郎くんと思わず抱き合っていた時、今までじっと真剣に観ていた視線が緩んで、ふと私たちを振り返った。




あなたのあなた「…勝てたね!」


仁花「うんっ!!」




みんなの勝利を喜ぶ満面の笑みがあなたのあなたちゃんにも浮かぶ。


あなたのあなたちゃんのいつもの穏やかな笑顔に戻ってくれて、それに対しても安心したのはここだけの秘密。




日向の、烏野のみんなの実力が発揮されて、緊張しっぱなしだった初めての公式戦は、無事に1次予選突破という結果で終わることができて、私はほっと胸を撫で下ろした。


















……………………………!作者より!…………………………





お久しぶりです!すっかり冬ですね〜


無事に期末テストも終わり、あとは冬休みを待つ日々…




先日まで修学旅行に行ってきていたので、しばらく更新ができていませんでした💦 (はいそうです言い訳ですごめんなさい)






自作の推しぬい 白布くんと一緒に旅行できて、とっても楽しかったです💕






出来ればこれから時間ができるので、毎日更新復活させたいな…と考えているところです!





今日から毎日更新続けられたら、12月24日のクリスマスイブにぴったり200話目になるんですよ!!


200話記念は何にしようかな〜と考えているところですが、また後日みなさんからアンケートをとるかもしれないので、ご協力いただければ嬉しいです🥰




毎日更新が宣言通りにちゃんと続くかどうかの結果は、明日の夜7時にわかると思うので!


それほど期待しないで待っていてください😅





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