日向「このサラダうめぇ!なんか、初めて食べる感じ!」
日向くんが勢いよくおかずを口に詰め込むと、ようやく箸を止めて、もごもごしながらそう言った。
咲希「それね、あなたのあなたが味付けしてくれたんだよね。」
咲希は日向くんと同じクラスだから、リラックスした雰囲気が2人の間に流れていて、日向くんもその言葉に「へーっ!ちなみに本田さんは何作ったの?」と会話が続いた。
結「もうあなたのあなたスゴいよ〜こんなに付け合わせのおかず考えてくれて!」
あなたのあなた「いやいや1人で作ったわけじゃないし…結だって、野菜の下ごしらえしてくれたじゃん。」
結「こんなにおかずのレパートリー持ってるんだから、もっと自信持ちなさい!」
あなたのあなた「は、はい……?」
結って怒ると怖いんだよね…何気にお姉ちゃん気質。まぁ、これはまだ序の口程度だけど、
山口「え…じゃあこのおかず全部考えたのって_______」
真佳「そう!あなたのあなたなんだよ〜」
玲奈「なんで真佳が得意げなのよ笑」
真佳「えへへ〜///( ´•ᴗ•ก)ポリポリ」
慌てて「や、いつも家で料理してるだけだし…」と反論すると、逆に先輩たちも目を丸くした。
縁下「へー偉いなぁ…。俺なんて自分のことで精一杯なのに。」
西谷「じゃあ、家でも母さんの料理手伝ってんのか!?すげぇなー!」
あ、
あなたのあなた「……あー、まぁ、そんな感じです笑」
「っていうか、お手伝いというより趣味みたいなものです。」と言葉を付け加えて笑うと、次々にみんなが感心して、私もその言葉一つ一つに笑顔を返す。
『あなたのあなたー、お野菜切るの手伝ってー』
『いつも手伝ってくれてありがとうね笑』
『……うん!美味しくできたね』
脳裏にあたたかくて懐かしい声が響いてくる。
あー、今日はダメだ。
久しぶりだから、余計に時間がかかるかも。
机を囲む笑い声と明るい空気とは裏腹に、私の笑顔だけは心の底か笑っていなくて、
ただその場しのぎの笑顔を貼り付けていた。
夕ご飯の後片付けを終えると、女子は順々にお風呂へと向かった。
あなたのあなた「私はやることがあるから、先お風呂行ってて。」
真佳「え…本当にいいの?」
あなたのあなた「うん。」
真佳「じゃあお先に、」
そう言って、みんなが食堂を出るのを見送ると、ワンテンポ遅れてから、ふぅーっと長いため息をつく。
近くにあった椅子に座ると、ノートを広げてシャーペンを走らせる。
ただ、何も考えずに。無心でひたすらと。
一瞬でもペンを止めてしまえば…
また蘇ってくる________
??「あれ……まだいたんだ。」
この声…って、
入口の方にそっと視線をやると、頭に思い描いていた人物と同じで。
あなたのあなた「……菅原先輩、」
先輩はお風呂上がりなのか、首にタオルをかけていて、その銀髪からはこぼれるように、少し雫が垂れていた。
菅原「なにしてたの?」
ニコニコ顔を浮かべてこっちに数歩歩み寄ると、机の上に置いてあったノートを覗き込む。
あなたのあなた「あ…それまだ書き途中で……」
菅原「え…これ全部白布さんが考えたの!?」
先輩が驚いているのはきっと、そのノートがただの料理のレシピノートじゃなくて、吹き出しで書かれていたメモの方だ。
『ニンニクに含まれるアリシンが、豚肉のビタミンB₁の吸収率を高める』
『↑ビタミンB₁は、エネルギー代謝に関わる栄養素。不足すると疲労を感じたり、やる気がなくなる』
『にんじんはβ_カロテンが豊富に含まれていて、油で調理すると吸収率up←炒め物に最適』
あなたのあなた「ちょっと教科書見たり、ネットで調べたりしながらですけど…笑」
菅原「すごいなぁ!な、ちょっとノート貸してくんない?」
あなたのあなた「別に構いませんけど、」
先輩は「サンキュー」と言ってノートを受け取ると、パラパラとページをめくりだす。
先輩は、めくっては料理を見て、「うわぁ〜名前からしてこれとか美味そう!」とか、「え、大根の上の葉ってふりかけにできんの!?」と楽しそうにノートを見てくれた。
私もコロコロ変わる先輩の楽しげな表情に目が離せなくて、自然と口角が上がっていたのが自分でも分かった。
菅原「全部美味そうだったなぁ…」
あなたのあなた「ありがとうございます笑」
そう言ってノートを返してくれると、少し沈黙が続いた。
先輩は、私の近くに寄せていた椅子に座って、首にかけていたタオルで髪をがしがしと拭く。
顔を伏せて、ましてはタオルで先輩の顔は見えなくて、
…菅原先輩が何かを言い出そうとしてること、そしてそれを言うためにここに来たことを察した。
菅原「……あのさ、さっきの夕飯の時だけど、」
あなたのあなた「…………………はい、」
この固い空気や、先輩の歯切れの悪い言葉。
何となく内容に予想がついて、思わず身がまえる。
菅原「さっきの、西谷の言葉________」
あなたのあなた「……………すみません。」
……ああ、やっぱりだ。
先輩は私の態度が変なことに気がついたんだ。
月島くんの言う、“作り物の笑い方”だったんだろう……
けど、これだけは触れないでほしい。
今、必死で込み上げる悲しさとか、懐かしさとか…そういうの全部を押さえ込んでたんだから。
先輩の気遣ってくれる優しさは素直に嬉しい。けど、触れてほしくないんだ。
……先輩、ごめんなさい。
…………………………!作者より!…………………………
ここで、皆さんに重大発表がございます。
ついにぃぃぃぃぃぃぃ!お目目ちゃんが10000を超えましたぁぁ!!!
ホントに皆さんにどれだけ感謝してきたか…
毎度毎度感謝ばかりで聞き飽きていると思いますが、でも言わせてください。
みんな!いつも読んでくれてありがとう!!
☆も、あと26個で100になるっっ!
いつも新作を出すと必ず♡押してくださる常連の皆さんも!ありがとうございます!!ちゃんと認知してますよ〜笑
これからもなのちゃん🍯🥜をどうぞよろしくお願いします!
じゃあ次の話で会いましょ〜!
次は菅原先輩sideスタートですっ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。