第23話

昨日のお礼に
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2021/06/14 20:59
翌朝、学校に着くとすぐに、「おはよ〜!」の言葉と共に詩織と莉音から抱きつかれた。



2人とも私の姿を見て安心してくれたのが、くすぐったいようで、申し訳なくて……、




朝練帰りの月島くんにも、無事ノートを返せたし、わかりやすいノートまとめのおかげで授業に乗り遅れることもなく、あっという間に放課後になった。







真佳「白布さーん、部活行こう!」



帰りのHR直後に廊下から顔を覗かせたのは、同じ部活で隣の3組の多岐真佳だった。




莉音「あの子…、あなたのあなたの友達?」



あなたのあなた「あー、同じ調理部の子。」



詩織「今日は調理部も部活かぁ」




頑張ってね〜、と2人も笑って教室から出ていき、私も荷物を持って多岐さんの元へ向かう。








あなたのあなた「多岐さんは何作る?文化祭の調理部のお店、」




移動までの尺稼ぎ、私はこの前顧問の先生から話があった文化祭についてのたわいのない話題を選んだ。




真佳「私?んー、まだ迷い中だけど、やっぱりお菓子とか作りたいよね〜」



多岐さんは、「白布さんは?」と言いながらこっちを振り向いて、柔らかく笑いかけた。




多岐さんの笑う顔は、いつも初めて見る笑顔ばかりで、とても表情豊かな子だと感じていた。












多岐さんとは部活の初日からの仲で……って言っても、本当は部活で友達作るつもりも無かった。





けど新入部員6人、調理室の机は1つにつき4人。自ら1年生がわらわらと集まる机とは別の方を選び、1人で座っていた。




真佳「すみませんっ、遅れました!!」




慌てたように入ってきたその子は、「先生に呼び出し食らっちゃいまして笑」と少し照れながら笑った。その様子に、思わず女子の私でも胸が高鳴ってしまうほどだった。






…………天然の破壊力は恐ろしい。。





必然的にその子と私は同じ机で2人きりだったから、その子…、多岐さんは持ち前の笑顔とコミュ力で私に話しかけた。





隣のクラスと知って、多岐さんは私に絡む機会も多くなった。傍から見たら、私と多岐さんの関係性は十分友達に見えるかもしれない。






それは喜ぶべきことか、そうでないのか、





今は分からないままだけど。












高橋先生「今日は地元の方からレモンを頂いたので、それを使って1人1品ずつ作ってみましょう。いつものように、お返しの分を忘れないようにね、」




みんな「はーい」






レモンかぁ……、はちみつレモンとか、チーズケーキの風味付けが定番だから、今度はレモンを主役にしたお菓子とか作りたいなぁ、




そんな少しのワクワク感を抱きつつ、まな板の上でレモンをスライスしていく。





真佳「おお〜。白布さん手際良いよね、」



あなたのあなた「ある程度構想は立ってるからね。」




はちみつレモンを作る工程は嫌というほど身体に染み付いている(別に嫌じゃないけど、)




いつもと違うのは、はちみつレモンを漬けたまま放置じゃなくて、時間短縮のため小鍋に入れて煮るとこだった。




煮立たせる間にパウンドケーキの生地をつくって、はちみつレモンの粗熱をとった後、型に入れたパウンドケーキに綺麗にレモンを並べた。








真佳「3、2、1……オープン!!!」



多岐さんの声に合わせてオーブンの扉を開けると、中から甘い香りが漂ってくる。




真佳「わぁ〜!!美味しそ〜!!!」



多岐さんは目をキラキラさせて私のパウンドケーキにうっとりとしていた。




あなたのあなた「ありがとう、良かったら1切れあげよっか?」




真佳「ぜひぜひ!食べたーい!!」





______でも多岐さんと食べたくらいでも、家にこれだけ持って帰っても食べるのにどれだけ時間をかけてしまうか……。








どうしようかと悩んでいると、ふと昨日の顔が思い出された。




『“ちゃんと学校行く”んでしょ?』






昨日のお見舞いのお礼ってことにすればいっか。





部活用トートバッグから、個包装フィルムを取り出し、一緒に出したマステに『月島くんへ』とか『莉音へ』という文字を書いていく。






ちょっとは喜んでくれるかな……?





そんな淡い期待を浮かばせながら、キュッキュッと音を立てながらペンを走らせた。










高橋先生「次の部活では卵料理を作るので、ある程度作りたいものを考えといてね。それじゃあ部長挨拶、」




部長「起立、礼。」



みんな「ありがとうございました!」






結「白布さん!さっきのパウンドケーキすっごい美味しかったよ!今度レシピ教えて〜」



怜奈「あっ、私も知りたいっ!!」




部活終わりの職員室前、調理室の環境点検を終えると、鍵戻しジャンケンで負けた多岐さんをみんなで待っていて、



1人で窓の外を眺めていた私に話しかけたのは、2組の佐藤結と佐竹怜奈の2人だった。





あなたのあなた「ほんと?じゃあまた今度、レシピ書いて渡すよ」




怜奈「え…?どっかネットから引っ張って来たんじゃなくて?」



あなたのあなた「その場でアレンジ考えてさ、イメージははちみつレモン×パウンドケーキって感じで。」




結「すごっ!レベチすぎるわっ!!」










多岐さんも戻ってきて、1年生の中で解散宣言を出すと、私は1人教室に戻ろうとする。




真佳「あれ、白布さんは……昇降口じゃないの?」




あなたのあなた「ちょっと教室寄ってこうかと。じゃあ、みんなまたね、」




結「うん、バイバーイ!!」










他のメンバーと別れたその足で、教室のドアを開く。





ガラッ







……少しは覚悟していた結果通り、鍵を閉め忘れた教室は静寂で包まれていた。





あなたのあなた「…やっぱり、月島くんたち部活かな……?何部か聞いとくべきだったな。」




まぁ、パウンドケーキなら日を置いた方が味が馴染むし、まぁいいかなと自分の中で結論づけると、廊下に出ようとドアへ向かう。










??「うわぁっっ!!」





ドアに飛び込んでくる男子をギリギリで避けると、見覚えのある髪がペコペコと上下していた。








山口「だ、大丈夫でs_________ってあれ…、白布さん…?この時間まで居るとか珍しいね、」





さっきまで探していた張本人が、穏やかな表情で私の顔を覗き込んでいた。







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