第114話

約束したのに…。
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2021/09/20 04:00



〜白布side〜




あなたのあなた「…わかんないの?お兄ちゃんに迷惑かけたら、怒るのはお父さんなんだよ…?」




震えながらそう告げるあなたのあなたは、以前にも見覚えがあった…























父「お前のせいだろ!お前が母さんを殺したんだろ!」



俺の義理の母親、そしてあなたのあなたの実の母親の葬式の場。


父さんはあなたのあなたにそう怒鳴っていた。




父「俺は…ちゃんと最前を尽くした!手術だって成功した!結婚して、また幸せな日々を過ごせるって、…母さんだって笑ってた。なのに!」




バシッ





鈍く、乾いた音がその場に響く。



周囲の人は驚いたように、さっきまでの礼儀正しい父との変貌を見つめていた。




父「お前が宮城に戻ったりしたから!お前があのまま兵庫の親戚の家にいて、俺と賢二郎と母さんで暮らせてたなら…こんな事にはならなかった!」


あなたのあなた「……っ、ひっ…ぐ………っ、ごめ、んなさい…」



大人「ちょっ、白布さん…落ち着いて!」


父「離せ!部外者は黙ってろ!!…これは、俺とこいつの問題なんだ!」



いつもの外面はどこにいったのか、我を失って怒鳴り散らかす父は…やはり、あなたのあなたの母親を本気で愛していたんだろう。



愛していたからこそ、悔しくて辛かったんだろう。






…でも、俺はそんな父さんを許すつもりはなかった。



白布「…あなたのあなた行こう。」


あなたのあなた「…ふうぅぅ……っ、、……う、ん、」



あなたのあなたは、なんとか息を整えようとその小さな肩を大きく揺らし、深呼吸を繰り返していた。


そんなあなたのあなたの背中に手を当て、俺たちは外へ出た。










あなたのあなた「…ごめん、なさい……迷惑かけて。」


白布「…お前に迷惑かけられるのなんか、今更じゃねえだろ。」



さっき父にぶたれた頬を冷やしながら、そう告げた。




正直、女子の慰め方なんて当時は分からなかったし、今もわからない。



だから中3だった俺は、そんな冷たい言い方しか出来なくて、一人奥歯をギリっと噛んだ。






あなたのあなた「…私、これからどうなるんだろ…」



そういって力なく笑うあなたのあなたは、脆い仮面のような笑みを貼り付けてそう呟いた。







あなたのあなた「…どこかに消えてなくなりたい。」




この言葉が、あなたのあなたが俺に初めて漏らした本音だった。








そんな状態になるまで何もしてやれなかった自分が情けなくて、


そんなあなたのあなたを見てるのも、その言葉を聞くのも辛くて、




俺はぎゅっとあなたのあなたを抱きしめた。








白布「…お前がいなくなったら、俺が困る。」


あなたのあなた「………」


白布「なぁ、もっと頼れよ。…俺のこと。もっと信じていいから。」



あなたのあなた「……信じたって、最後は絶対裏切られる。」


白布「俺は裏切らないから。絶対あなたのあなたのそばに居る。」



そう強く言っても、あなたのあなたは首を横に振る。





あなたのあなた「…意図しなくても、大人の力で子供の願望なんて、約束なんて…すぐに奪われる。」




白布「そんなの関係ねぇ」




俺はあなたのあなたの心に届くように、抱きしめる腕に力を込め、必死に語りかけた。





白布「大人がどうしようと、俺はずっとお前の兄貴だし、…ちゃんと守るから。」




だから、信じてほしい……。





抱きしめた腕を解き、あなたのあなたの正面に顔を合わせると、目をまっすぐ見てそう告げる。












さっきまで空っぽだったあなたのあなたの瞳に、いっぱいの涙が溢れ出した。






































あの時は、あなたのあなたが俺のことを信じてくれて、無事に大事にならずに解決できたけど……、








あなたのあなた「…っ、そんなの…私は望んでなんかないっ!!」



そう叫ぶあなたのあなたを前にして、また俺は自分の無力さを痛感した。







今まで泣くことはあっても、自分を責めることはあっても、他人に怒鳴るなんてことは1度もなかったのに……



内に溜め込みすぎた想いを外に発散しないと、今にもあなたのあなたが壊れてしまいそうで怖かった。









結局、俺はあなたのあなたの力になれてなかったんだろうな。






「ちゃんと守る」って、約束したのに……

























〜あなたのあなたside〜





お兄ちゃんに初めて怒鳴ってしまったあの日から2日と半日が過ぎた、土曜日の午後。




あの日の翌朝、発熱が悪化したことで木、金と学校を休み、なんとか回復した。






そして、今はずっと行けてなかったスーパーへの買い出し。



袋いっぱいに野菜やお肉等を詰め込んで、両手が塞がった状態でスーパーを出た。






空は私の心模様とは正反対なほどに眩しくて、もうすぐ夏なんだ…と再確認させるほど太陽の主張が激しかった。





_______あの空は、東京にも繋がってるんだな…。




手で直射日光を遮りながら、空を見上げた。

















??「あれ…、あなたのあなたちゃん?」





誰かが私の名前を呼んだ気がして、思わず辺りを見回す。








と、すぐに自分の行動を後悔した。



















及川「あ〜やっぱり!久しぶりだねあなたのあなたちゃん!」






ニコッと爽やかスマイルを浮かべる及川さんが、私に笑いかけていた。










あなたのあなた「お、及川さん……」

























……………………………!作者より!…………………………






前回の話で、次回予告『え…、そっち!?』と書いていましたが、お気づきでしょうか…




はい、言ってたのにタイトル違いますね。すみません🙏





過去が長すぎてそこまで入りきらなかったんだよぉぉ…









ということで、今度こそ次回予告


『え…、そっち!?』







…勉強しなきゃなのにこんなに小説書いてて大丈夫かな🥺






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