第13話

15
2019/01/03 08:49
私は呪われているんだろうか?そう考えて1人で笑う。暗い工場に閉じこめられて手足を拘束されているやつがとる行動ではないと分かっていても笑ってしまう。3度目だ。前回までと違うのは助かる見込みがないことだけ。男達は私の身体をたっぷりと楽しんだ後、銀色に光る刃を持ってきていた。
「お姉ちゃん、これ見たら何されるかわかるよね?ごめんね、俺達君の身体に用事があっただけだからぁ、ここで眠ってもらうね?言い残したことでもあれば聞くけど、なんかある?」
気持ち悪い男どもだと毒づきながら、
「えぇ、では私の大好きな人の名前だけ叫びますね。」
「好きにしたらいいが、ここ、人が助けに来れるような場所じゃないぜ?というか、完全防音されてる部屋だから、声も届かないがね。」
男が言い終わった瞬間、朱里は6年前から好きだったあいつの名前を叫ぶ。声高らかに、お腹の底に眠る声を全て引き出す。
「りぃぃぃぃぃんんんんー!!!」
かつて体に入れられた薬の名前R1-nがRinと見えるからそう名付けたのだろう。浅はかだよ。バカ。

「あかりぃぃぃぃ!今行くからな!」
そう言って1人の殺人鬼が暴れ始める。男どもを1人、また1人となぎ倒していく風貌はあの時のままだった。一瞬だった。全員を殴り飛ばして、あっという間に私の前まで来た。
彼が私の顔を覗き込んで、
「朱里、怪我はないか?」
「遅いよ。もうバカ。」
朱里は凛の後ろに長い刃を持った男がたってこちらを睨んでいることに気付いた。でも何も言わなかった。おそらく凛も私の心を読んで気付いていただろうが動かなかった。

冬の夜に静かに佇む工場には、雪と、手紙と、抱きしめ合う二つの死体。そして、真下の雪を濡らす1粒の涙。
清く澄んだ涙には血が映り、また冷たい月光も移していた。
これは、雪が降りしきる寒い日のことでした。

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