第7話

ある日
19
2019/01/01 12:46
(これは何日目の朝だろうか)
そんなことをぼーっと考えながら朱里は目を開ける。凛の顔。優しいおはようの声。それだけ伝えて直ぐに部屋をでる。もう気にもとめない。こんな日が何日続いたのか朱里には知る手段がなかった。携帯など隠し持っていれるわけでもなく、部屋にはテレビや電話は愚か、カレンダー、時計ですらない。気温から推測するにおそらく3月初めと言ったところか。そんな予想をしながらパンケーキにかじりつく。この頃になると朱里は脱出を諦めていた。そして、これが最後の食事になることもわかっていた。パンケーキを食べ終え、キッチンへ向かう。お目当ての銀の刃を取り出す。彼女はそれを高く高く掲げてこの20年間を、いや正確には5年間を思い出す。くだらない人生だったなと1人で笑う。
「お父さん、お母さんごめんね。私は幸せだったよ。」
そう呟いて刃を喉元目がけて勢いよく突き刺す。

生暖かく、赤い液体が彼女を包み込む。異変に感じたのは少し時間が経ってからだった。彼女の体に痛みなどなく、指は自分の意識で動く。
彼女はゆっくりと目を開ける。衝撃だった。彼女がさしたはずの刃は何かの腕を貫いて、赤く輝いている。視線をあげる。
「朱里さん、怪我はないですか?ふふふ、なら良かったです。」

私の予想は外れたのか……
私たちの頭上では雪がチラチラと降っていた。

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