第8話

感情
40
2019/01/02 13:44
えっ……
なんで。どうして。この人殺しは私を助けたの?どう考えてもおかしい。人殺しが自殺を止めるなんて矛盾しすぎている。
「朱里さん?どうして泣いているんですか?怪我でもされましたか?」
涙が出ている。いつもと違って今日は自覚していた。が、理由がわからない。私がこんな人殺しに同情している?そんなわけない。悲しんでいる?そんなわけない……とは言い難い。けど、そんなわけない!
頭上から降る雪の冷たさに気づき、寒いと感じ、目を開けた朱里に飛び込んできたのは地獄のような画だった。あの男はもう居ない。
彼がいたことを証明するのは、降り積もった雪にある赤い斑点のみだった。

その夜、朱里はドアを開ける。
外に出ても凛は帰ってこなかった。
彼女は暗い夜道を1人で歩き出す。
降り積もった雪を一歩一歩踏みしめて歩き続ける。
あとに残ったのは、彼女の足跡と、青い雫に濡れた氷のつぶのみだった。

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