ホラーside
クロスと未来が走り始めた。
勿論、男も追う。
俺達の役目は...
声を張り上げるエラー。
その声から、必死さがよく伝わる。
...遠回しだが、「死守しろ」と言っていたように感じる。
エラーの言う通り...死守しなくては。
クロスと未来を一番前で走らせ、後ろの俺らは男から守る。
ちなみにその一番後ろにいるのは俺、前にはマーダー、キラー、エラーの順。
クロスとナイトメアは未来の両隣にいて、共に逃げ走っている状態だ。
マーダーは舌打ちをして、走るスピードを上げる。
俺もそれを見てスピードを上げるが、男もスピードを上げたようだ。
俺に触れようとする左手を払うと、その手はマーダーへと移る。
俺の左手にある血のついた斧を振り、斧頭を使って手を退かす。
男の左手にあったのは酒の空瓶。細長いヤツだ。
その瓶は、斧の衝撃でパリィン、と割れる。
辺りにはガラス片が飛び散り、その一部が俺の頬を掠る。
だが、男はそのガラス片を気にせず踏んでこちらに来る。
...昔の未来と同じように、後も先も考えず。
意を決して後ろを振り向き、これ以上行かせないように俺は止まる。
当然ながら先には行けないので男も止まる。
途中俺を止めようとする声が聞こえるが、気にしない。
少々怯えながらも斧を構えて持つが、刃は自分側に向けている。
...理由としては、これでも一応未来の親だからだ。
家族が殺されるのは何よりの苦痛だろう。
そう思ったから。
できるだけ落ち着いて、冷静を装って話しかける。
目の前にいる男が、どんなモンスターよりも恐ろしく見えた。
俺は、この男が未来を...虐めていた奴だ、と思うと腹が立ってきた。
自分の娘で、まだ小さいのに...頭が湧いてんのか?
斧を振り、斧腹で男の腹を突こうとする。
...その時。
何故か未来が来て、俺と男の間に割って出てきた。
そして、俺の前で大きく手を広げる。
...まるでそれは、男を守るように。
俺はそんな突然のことに頭が回らず、しかし咄嗟に斧の動きを止めた。
斧腹は未来の首の辺り寸前で止まり、未来は少し俺を睨みつける。
悲しそうに睨む未来に手を伸ばす。
彼女の手を取り、男に取られまいとすぐに引き寄せる。
躊躇いはあったらしく、目を伏せたが頷いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。