第31話

死にたがり、再度傷。
2,035
2022/05/29 12:40
キラーside





俺達は家の中に入った。

家の中は真っ暗で、でも辛うじて物の位置が分かる。

...未来ちゃんの声は2階から聞こえる。

真っ暗だから階段を登るのに苦労した。

階段を登る度、未来ちゃんの痛がる声が大きくなって聞こえる。

それを聞く毎に、胸が締め付けられるように痛くて。
キラー
...っ
早く未来ちゃんの元に行きたくて。

思わず呼吸を荒げてしまう。
未来
未来
痛い!
そしてついに、未来ちゃんの声が、より鮮明に聞こえるようになった。

声の位置からして...ざっと3m程先にいる。

その声のする方向へ、一歩、また一歩、歩いて。

触れられそうな距離まで来た。
未来
未来
やだ...っ!
父親
父親
黙ってろッ!!
未来ちゃんと、その父親らしき男の声が聞こえ、窓からの月明かりで様子が見える。

男は、未来ちゃんに向かって酒の瓶らしきものを振り下ろす。

それを見て、俺は無意識に動く。
キラー
ッ!
彼女を右手で引き寄せ、左手で切れ味の良いナイフを男に向ける。

同時にナイトメアの触手とエラーの糸も、男に絡みついて動けなくさせた。

もちろん、瓶を持っていた男の左手も押さえている。
父親
父親
何だお前は!何処から出てきやがッた!!
男が叫んで暴れようとするが、糸と触手が絡み、一層動けなくなる。
未来
未来
きらぁ...?
未来ちゃんは俺を見上げ、涙目で俺を見る。

その表情は、辛そうで、呼吸が出来なくなりそうだった。
キラー
...大丈夫だよ
それだけ言って頭を撫で、安心させてクロスの所へと行かせる。

クロスは彼女を守り、片手に大きなナイフをギュッと握っている。

そんな2人に、男は突進して行くが。
マーダー
マーダー
こっちにもいるんだがなァ...??
男の後ろに回り、首筋に先の尖った骨を当てるマーダー。

声と顔こそ楽しんでいるが、内心は憤怒ふんどに包まれているだろう。
父親
父親
ンだよテメェら...!!
いつの間にか糸と触手を解いていたらしく、自由に動けていた。

男は瓶で骨にぶつけ、キンッ、と高い音が響く。

その力がよほど強かったのか、マーダーは顔をしかめる。
マーダー
マーダー
ぐ...っ
苦難しているマーダーを男は押し退け、マーダーはドサッ、と倒れる。

男はそんなマーダーに目もくれず、その先のクロスと未来ちゃんに目を向けた。
ナイトメア
ナイトメア
お前ら走れ!
危険を察したナイトメアが叫ぶ。

聞いたクロスは頷き、未来ちゃんの手を取って走り出す。


─────目指すは、俺達の世界に帰れるインク溜まりへ。

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