
第50話
小話28〜消えていく日々〜
俺は毎日記憶が感情と共に消されている。
だから俺と今まで仲良くしてもらっていた人の名前だって、顔だって覚えてない
そんな自分が嫌で今まで人を避けてきた
((ガララ
今日も黙っていれば大丈夫
そう思っていた直後
…え?
何この人…知り合い、かな?
とりあえず挨拶だけして早く去らなきゃ
よし、とりあえず挨拶はした、あとは去ってくれれば大丈夫
そう思っていたのに、そいつは俺が最も恐れていたことを聞いてきた
やばい
記憶のことを聞かれたら…
とりあえずなにか返事をしなきゃ
そう思い、俺は
なんて曖昧な返事をした
すると、そいつは一瞬酷くショックを受けたような、悲しそうな顔をして
聞かないで
これ以上俺に関わってこないで
なんて言葉は通用しないような気がして俺は
やばい、不自然かな?めっちゃ焦っちゃったけど…
だけどそいつはなにかを察したように笑顔で
なんて言葉をかけてくれた
『よろしくな』初めて言われた気がしなくもない
何故か懐かしいような気持ちになって、去っていくそいつの姿を目で追ってしまった
――――――――――――――――――――(仁宅)
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
いつも思う
どうしてか分からないけど
記憶が無いはずなのに座れと言われた場所を見るといつも過ぎるこの気持ち
だけど今日はいつも以上にそう思った
どうして?
あぁ、そうか…あいつに話しかけられたことが嬉しかったんだ。失いたくないって思ってるんだ…
そう、強引に座らせられ激しい頭痛と共に俺は意識を失った
――――――――――――――――――――(次の日)
――――――――――――――――――――(学校)
ここが俺の学校…とりあえず入るか…記憶がないことがバレなければ大丈夫…
((ガララ
仁くん…?え?何この人…知り合い、かな?
とりあえず挨拶はしなきゃ
するとそいつは「え?」みたいな顔をしてきた
何もされてないけど……分からない
この人が何故こんなにも絡んでくるのか
頭が混乱して俺はなんていえばいいのか分からなくて
と、戸惑っていると
そいつは虚空を見つめ、ボーッとしていた
なんでそんなぼーっとしてるのか分からないけど…
とりあえずバレないためにもこの場を去っとかなきゃ!!
俺は急いでその場から逃げた
なんだかよくわかんなかったけど…だけど…挨拶だけなのにこんなにも嬉しいものなんだ…
だけど…こんなに嬉しい気持ちも1日しかもたない
悲しい現実は毎日やってくる
そうやって俺は今日も、明日も、明後日も書き加えられた俺の記憶が白紙に戻されていくんだ
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