第12話

あの事故
7,552
2019/06/21 11:08
白石恵
白石恵
よし。これでいいわ。
緋山美帆子
緋山美帆子
縫合はフェローにまかせる。
名取颯馬
名取颯馬
わかりましたー。
横峯あかり
横峯あかり
やっておきます!
〜医局に向かう途中
緋山美帆子
緋山美帆子
あなたどうしたの?何があった?
藍沢耕作
藍沢耕作
白石恵
白石恵
藍沢先生何か言ったの?
藍沢耕作
藍沢耕作
…あの患者で練習しろと言っただけだ。
それだけで逃げるのは弱すぎるだろ。
緋山美帆子
緋山美帆子
何か事情があったんじゃない。藍沢もさ練習って言い方よくないよ。
〜医局にて
ガチャ
緋山美帆子
緋山美帆子
あなたここにいたの。牧原さんなら安定してるから大丈夫。
あなた

白石恵
白石恵
あなた先生。何があっても患者さんから逃げ出すのはよくない。
あなた

すみません。それは反省してます。
本当にすみませんでした。

あなたは精一杯3人に頭を下げた
白石恵
白石恵
どうしてあんなことしたの?
あなた

…練習台にされる患者さん、その家族の方の気持ちを考えたら無意識にメスを置いて逃げていました。
藍沢先生のあの言葉は15年前と同じだったから。

藍沢耕作
藍沢耕作
…15年前。
あなた

白石先生前に見ましたよね?私の机の上にあったショッピングモールの爆発事故の資料。私と私の家族はその事故に巻き込まれました。父と母は死にました。姉は事故から3日後に肺挫傷で死にました。

白石恵
白石恵
そうだったのね…。
15年前の事故で何があったの?
〜15年前のショッピングモールの事故
あれは私が11歳の時でした。
大きな爆発音が聞こえて私たち家族は爆風に飛ばされて、そこからの記憶はありません。


目が覚めて左足に激痛が走りました。でもなんとか立てた。私は骨折してるだけだったから。辺りを見回してみると倒れてる人がたくさんいて頭が真っ白になりました。どうしたらいいんだろうって。


私の近くには家族がいなかった。だからすぐに家族を探しました。10mくらい先に父と母の姿が見えました。駆け寄ってみると2人とも意識がなかった。だから必死に叫びました。
「助けて!助けて!」って。


私のその声に気づいてくれたのが藍沢先生でした。
ーーー
藍沢耕作
藍沢耕作
大丈夫ですか?翔北救命センターの藍沢です。診察しますね。
あなた

私は大丈夫だからお父さんとお母さんを助けて!お姉ちゃんもいないの!

冴島はるか
冴島はるか
落ち着いて。お姉ちゃんは今は救助されるのを待つしかないわ。
藍沢耕作
藍沢耕作
冴島、挿管する。チューブ。
冴島はるか
冴島はるか
はい。
藍沢耕作
藍沢耕作
男性の方は心拍も下がってるな。大動脈を遮断して脳への血流を確保する。開胸しよう。
冴島はるか
冴島はるか
わかりました。
藍沢耕作
藍沢耕作
…右心室に血腫がある。これじゃ無理だ。残念だ。
あなた

そんな…。

冴島はるか
冴島はるか
お母さんの方は脈も呼吸も対光反射もありません。
藍沢耕作
藍沢耕作
女性はもう救命は不可能だ。
あなた

…やだよ。そんな。お父さん!お母さん!

藍沢耕作
藍沢耕作
…クランプしてみる。
冴島はるか
冴島はるか
え。でもクランプしても…。
藍沢耕作
藍沢耕作
分かってる。練習だよ。こんな経験滅多にできない。
あなた

…練習。

藍沢耕作
藍沢耕作
サテンスキーくれ。
冴島はるか
冴島はるか
は、はい。
あなた

ーーー
あなた

私は声が出なかった。目の前でまたメスを入れられる父の姿をただ見てる事しかできなかった。

白石恵
白石恵

プリ小説オーディオドラマ